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能所

のうじょ #4539

能所

のうじょ

能と所とからなる。
ある動作の主体となるものを能、その動作の客体・あるいは目的となるものを所という。
能動と受動。
あるいは自動的なものと他動的なもの。
この両者は相関不離であって、教主教法・人師等に用いその用例は多い。
(1)能開・所開
法華経の特色である開会に用いる。
法華経は四十余年に説かれた爾前方便権教を開顕して一仏乗に会入せしめる。
ことに迹門では方便権教と法華実教とを相対し施・開・廃の三重にわたって法華一乗の真実教を開顕し、法華経に権経が会入せられ、合わせて二乗の人を会して成仏が説かれる。
本門では同じく施・開・廃の三重をもって久遠本仏が開顕されることによって、諸経の諸仏がこの寿量本仏に能統一される。
このように法華経は諸経のえ、諸開会するものであって、法華経を能開・諸経を所開という。
日蓮聖人は『十章鈔』に南無阿弥陀仏南無妙法蓮華経とを相対して、法華経は能開で念仏は所開と示されている。
ち「南無阿弥陀仏爾前にかぎる。
法華経にをいては往生の行にあらず。
開会の後因となるべし。
南無妙法蓮華経は四十余年にわたらず。
但法華八箇年にかぎる。
南無阿弥陀仏開会せられず。
法華経は能開、念仏は所開なり」(定四九一頁)と述べられている。
(2)能弘・所弘
教法を弘める人を「能弘之人」といい、その人によって弘められる教法を「所弘之法」という。
つまり弘める人と弘められる法をいう。
正像二千年の天台大師伝教大師が出現せられて法華経の迹門を中心として弘通せられたが、末法に入っては、久遠本仏より付嘱を受けた本化の菩薩が、寿量品の肝心たる妙法五字本法を弘められるのである。
ここに日蓮聖人末法の能弘の人=本化の応現としての自覚があり、その教法本法ということである。
道暹が『輔正記』に「法是れ久成之法なるに由るが故に、久成之人に付す」と述べ、聖人はこの文を『観心本尊抄』(定七一七頁)の流通段に引用されているのである。
(3)能化所化
弟子や衆生を教化する人、教え導く師を能化といい、教えを受ける人々、教化せられて悟りに至る人々を所化という。
本門教主釈尊は能化で、この本仏に初めより教えを受けた菩薩を所化、即ち本化の菩薩という。
あるいは教主釈尊の救いの対象となる末法の衆生は所化という。
伝教大師の『法華秀句』に説かれる「法華十勝」の第八・即身成仏化導勝には「能化所化倶に歴劫無し。妙法の経力にして即身に成仏す」と有名な句がある。
この場合の能化とは龍女を指し、その竜女の教化を受ける衆生を所化という。
また、『観心本尊抄』の四十五字段には、能化たる釈尊の因行果徳妙法五字を所化が受持することによって、本因・本果・本国土の三妙が一体となり能化・所化同体なることが明かされている。
またこの能化所化は一般の僧堂生活にも使用され、師匠あるいは住職を能化といい、弟子を所化という。
(4)能具・所具
能具は具足する立場であり、所具は具せられる立場をいう。
日蓮聖人一念三千の根本を十界互具に置かれているが、この十界互具論には十界各々に能具・所具が論じれれる。
観心本尊抄』の初には、この十界互具が論じられ、迹門は九界所具の仏界、本門界所具の九界であることを示されている。
(5)能観・所観
観の主体となる能観と観の対象となる所観をいう。
見るものと見られるもの。
認識作用の主体と客体。
例えば『観心本尊抄』を能所に分かつとき、初めの観心を明かす段は能観段といい、本尊を奠定される段を所観段と称する。
(6)能顕・所顕
顕すこと、あるいは顕すものを能顕、それによって顕されるもの、あるいは明らかにされるものを所顕という。
例えば『祖書綱要』の寿量所顕本覚三身章には「塵点遠寿を以て能顕と為し、相即の三身是れを所顕と為す。
此の所顕を挙て方に超過を論ず」とあり、寿量品に久遠実成を顕すことによって、文底の真義として無作三身が開顕されることをいう。
つまり文上と文底とを分別し、文上を能顕、文底を所顕と解釈するのてある。
(7)能行・所行
行ずる者、実践する人を能行といい、その人によって修行される法、実践されるがらを所行という。
台の『摩訶止観』は、章安大師の序にあるとおり「天台大師説己心中所行法門」であって、大師己心中に実践実証されたえを説かれたものである。
この場合、天台大師を能行といい、実践された具体的な法門は『摩訶止観』であるということが出来る。
(8)能詮・所詮
詮とはあらわすという意。
言いあらわすもの。
ち語句、文章、教法などあらわす側を能詮といい、それらの文句によってあらわされた意義・内容・ことわりなどを所詮という。
文は能詮、義は所詮。
以上のように能所の一例を記したが、他にも多くの用例がある。
その場合、能所の概念に従って一応の解釈がなされるものであるといえよう。
《『遺文辞典』教学篇「能所」の項、『日蓮辞典』「能所」の項》

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