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住職

じゅうしょく #590

住職

じゅうしょく

住職とは住持職の略意で寺の主長である僧をいい本宗においては自ら正法を受持し皆帰妙法の誓願を有する寺院に住し、檀信徒化し一切の寺務を担当してその責に任ずる職のことである。
その任免は古来から官によって行われていた。 近くは慶応四年(一八六八)「寺院住職任免は凡て太政官に出願」の文書があり、これが明治四年(一八七一)各地方長官の管轄となり、同一七年各宗管長に移行するところとなった。
住職の呼称が記録されている文書としては古く寛文五年(一六六五)「諸宗下知状」の中にあり、住職任免文書としては明和九年(一七七二)「京都清涼寺住職之儀御城ニ於テ仰付ラル」「知恩院大僧正、右住職御白書院ニ於テ老中列座仰渡サル」等がある。
古代はこれを住持と称し平九年(七三七)「太政官謹奏」の中に見られ、承和四年(八三七)等他諸書に記されている。 住持の意味は一切菩薩智所の佳境に住して諸仏の正法輪を護持す。 いわゆる仏子住持なりと解釈されている。 この住持の呼称が文明六年(一四七四)「大徳寺住持職ノ奏聞勅許云云」と記されているように、住持職即ち住持の職となり、更に持の一字が略されて住職の呼称ができたように思われる。 但し明治においても未だ住持職の呼称は使用されている。 明治三年身延日祥は住持職の綸旨を賜わり、民においても宗派により地方によりお住持さんの言葉が親しまれている。
住職の職務については、寺務を担当しその責に任ずとあるが、その中において檀信徒化は重大な任務である。 住職は少なくとも年四回以上は自坊において教筵を張り、仏事その他行事の際は努めて法話をなし、また管内における他の住職と共に計画して伝道に精進しなければならない。 だからこの法灯を伝えるために徒弟一人は必ず養するよう義務づけられている。
経済的部門としては寺堂の保護、寺有財産の管理(寺有財産)がある。
次に寺院には寺格・寺跡(寺院の区分)があり、住職になるためにはその寺格寺跡に相応した僧階が必要である。 明治二九年には総本山・大本山(権僧正以上)、本山(権僧都以上)〈止むを得ない場合はこの限りでない〉末寺(教師試補以上)と規定され、これが数度の改正を経て昭和四年(一九二九)には総本山・大本山(僧正以上)、本山(大僧都以上)、末寺緋金襴跡(大講師以上)、紫金襴跡(准講師以上)、素紫跡(二級試補以上)、平僧籍(四級試補以上)となった。 同一六年本末解消三宗派合同により総本山大本山(僧正以上)、別格山(旧本山・権僧正以上)、一般寺院師)〈寺禄等級二〇等以上は大師〉となった。
次に住職の種類は住職(解説の便宜上ここでは単に住職の呼称で一つの種類とした)特選住職、兼務住職があり、短期寺務執行を職務とする住職代務者、寺務取扱者、寺務担任者があり、将来住職となることを予約する制度に後住職候捕者がある。 第一にここにいう住職とは通常の手続により就任する場合で総本山・大本山・本山は選挙によって決定するので、前掲被選資格者中から当該本山関係者によって候補者三名を選定、後住職選挙申請書並びに辞任願書を管長に提出、管長は選拳期日の二〇日以前に選挙人が住職している寺院に告達及び投票を配布する。 この場合現任住職が事務を運営し、干与人として末頭執事が連署する。 選挙人である総本山・大本山・本山住職及び該山末寺住職は投票用紙に後補者三名中から一名を・記して宗務院に提出、選挙期日午前一〇時宗務院において総監もしくは部長・他宗務役員、末頭執事立会のもとに開票、当選人決定を待ち、その旨を当該本山より本人に通知、当選人承諾、住職当選承諾具申書を管長に提出、管長が住職を任免する。 この選拳執行につき住職欠員の場合は末頭執事が住職に代り右の手続をする。 また住職欠員中は干与人の協議により寺務取扱者を設けることができる。 但しこの場合、寺務取扱者は寺有財産の監護及び日常の寺務を取扱うだけで他の項に関与することはできない。
昭和一六年宗制改正により総本山・大本山・住職は従来通り選挙により決定するけれども、その方法が変更された。 被選人候補者三名は内二名を宗機顧問会において選考、一名は当該本山において推薦した者となり、選挙人は住職、法人教会の主管者及びその代務者となった。 選挙人名簿は宗会議員選挙人名簿による。 別格山は該山より選定された三名の候補者につき管長が任命することとなった。
次に末寺住職の場合は前掲被選定資格者中から住職が後住職候捕者一名を選定、干与人に協議し、賛同を得て後住職薦挙状並びに辞職願を干与人総代連署作製、住職欠員の場合は欠員の日から九〇日以内に法類総代が住職に代り後住職候補者を選定し、他の干与人の賛同を得て、後住職推挙状を調整(干与人連署)宗務所経由、当該本山・本寺に提出、当該本山・本寺は住職任免願書を調製し宗務院に提出、宗務院は調査の上、任免し辞令は当該本山・本寺へ交付す。 本人は本山・本寺に 出頭して辞令を受ける。 当は本末制があり本山に任免権があったので、本山からも辞令が発せられた。
次に特選住職。 後住職候補者選定につき現住職干与人、または干与人間の意見が調わない場合、あるいは後住職薦拳期間内にその手続を行わない場合は管長が住職を特命する。 これを特選住職という。
次に兼務住職。 寺禄等級六等以下の寺院は兼務住職を置くことができる制度で、これは正住職として一寺に住しているものが、同時に一人で他の寺の住職を兼ねる。 その手続きは兼務する由を詳記して期限を定め、当該本山に申し出る。 兼務期は三ヵ年を限とし、止むを得ない情があるは更に手続きして三ヵ年延長することができる。 当該本山・本寺はこれを宗務院へ提出、宗務院は審査の上許可す。 兼務住職の期間満了になればその住職権は自然消滅する。
次に寺務担任者。 これは住職ではないが住職欠員の場合または住職権停止に処せられた場合、前者は干与人の協議により設け、後者は管長が命じてこれを置く。 但し本山の場合における寺務取扱者と同じく、寺有財産の監護及び日常の寺務を取扱うだけで他の項に関与することは許されてない。
なお兼務住職に関しては大正元年(一九一二)『日蓮宗法規』によれば寺禄等級一六等以下になり、更に昭和一六年改正されて二一等以下に変更され、一六年以後は同一人で二ヵ寺以上兼務できないことになり、期は三ヵ年であるが、延長の分は二ヵ年に短縮された。
次に住職代務者。
(一)住職が欠けた場合一四日以内に住職任命申請をしない
(二)住職が徴集、召集または徴用された
(三)住職が病気その他の故で三ヵ月以上職務を行えない、に置く。
総本山・大本山・別格山の住職で(一)に該当する時はその寺院の干与人の合議で一名を代務者に選定、総代の同意を得て干与人から管長に任命を申請する。 (二)、(三)の場合は住職においてその寺院の干与人につき住職代務者を定め、総代の同意を得て管長に任命を申請する。
一般寺院及び開教地の寺院住職が(一)の場合は、一般寺院ではその寺院の干与人、開教地寺院では開教監督において、住職代務者の候補一名を選定し、総代の同意を得て管長に任命を申請。 (二)(三)の場合は住職において住職代務者の候補一名を定め干与人総代の同意を得て管長に任命を申請する。 住職代務者を置く事由が生じて一四日を経過、なお任命を申請しない時は管長は宗務所長に事実を調査させ住職代務者を置くことができる。 住職代務者就任の事由が止んだ時は解任を管長に申請、一般寺院で住職欠員のため就任した住職代務者は、住職が欠けた日から九〇日以内に後住職候補者を選定しその任命申請の手続をする。
次に末寺住職候補者。 昭和一一年施行された制で、寺院等級二〇等以下の寺で徒弟一名を限り、干与大賛同の上、本山の承認を受け書類を宗務院へ提出、宗務院備付の後住職後補者原簿に登録される。 現住職転住、辞任、死亡等で欠員となった場合、優先的に住職に就任する規則である。
戦前より引続き寺院の代表者を指して住職あるいは住持と称した。 戦前は寺院の代表者には寺跡に応じ、緋金襴跡(大講師以上)、紫金襴跡(准講師以上)、素紫跡(二級試補以上)、平僧跡(四級試補以上)、と就任資格があって素紫跡及び平僧跡の寺院に限り教師試補(現在の教師補)でも住職となる事が出来たが、戦中(昭和一六年本末解体以後)寺跡が撤廃となり教師試補制度を廃して教師補と名称を改めて以後は、住職となる者は教師に限られ、特例として現在従前の規則により就任している住職に限りその在職中のみを認め、新たなる寺院に転職するを禁じた。 戦後僧侶であって信行道場の課程を終了し教師資格を有する者で僧階の新叙を受けた者は全て住職候補者となることが出来た。
住職となるには一般の寺院にあっては准講師以上の者につき住職候補者を選定し干与人及び総代の同意を得て現住職が住職承認申請と同時に自己の退職承認申請の手続きを了して宗務総長の承認を受けなければならない。 特別寺院にあっては住職候補者の僧階は祖山権大僧正以上、大本山の称号を用いる伝統ある霊跡・由緒寺院僧正以上、前記以外の霊跡・由緒寺院権僧正以上で退職しようとする場合には、干与人と協議して前記の住職候補者一人を選定し総代の同意を得て自己の退職承認申請と同時に住職承認申請を出して宗務総長の承認を受けるものとする。
住職が欠けた場合代務者が、また代務者がなければ干与人が代って前記の手続きをなすものとする。 但し前記の手続きは住職の欠けた日から三月以内にしなければならない。 なお前記の選定及び同意については寺族の意見を聴くことが含まれている。 住職が欠けた日から三月を過ぎても住職承認申請がないときは宗務総長は当該宗務所長に事実を調査させた上、住職またはその代務者を任命することができる。
住職候捕者の選定に関し住職または代務者と干与人及び総代の間に協議が調わないときは関係者はその事情を具し、宗務所を経由して宗務総長に裁定を申請することができる。 この裁定により住職候補者が決定したときは一月以内に住職承認の申請をしなければならない。 もしこの手続きをしないときは宗務総長は当該宗務所長に事実を調査させた上、住職またはその代務者を任命することができる。 住職が欠けて二週間以内に住職承認の申請がないときまたは病気その他の故により三月以上職務を行うことができないときは代務者を置かなければならない。 但し日蓮宗加行所入所期はこの限りでない。 病気その他の故で住職が代務者を選定することができないときは干与人が選定しその由を具して申請することができる。
住職が欠けて三月以上承認申請がないとき、あるいは宗務総長の裁定により住職候補者が決定し、なお一月以上承認申請の手続きをしないとき、または住職代務者を置く事由が生じ二週間以上経過しても承認申請をしない場合において、宗務所長に事実を調査させることができない実情にあるとき、または緊急に任命を要する実情にあるときは宗務総長は宗務役職員に調査させた上、宗務所長の意見を聴いて住職またはその代務者を任命することができる。 緊急を要する懲処分によって欠けた住職または住職代務者の後任任命に限っては第一五条第一号ないし第一八条第一項の規定に関わらず宗務総長は、直ちに住職代務者を任命することができる。 このように宗務総長が任命する住職を特選住職という。
清澄寺と宗立谷中學寮(浄延院)住職と新設寺院の初代住職を除くほか、住職は他の寺院の住職(兼務住職)となることはできない。
住職は退職しないで干与人及び総代の同意を得て住職候補者登録を申請することができる。 この登録をする者を住職予定者といい、同に順位を定め二人以内選定することができる。 この住職予定者に限り僧籍を有する小学校卒以上の者を選定することができる。 但し現に住職である者が住職予定者に選定されるときは、現に住職している寺院の干与人及び総代の同意を必要とし、この場合現に住職している寺院の住職予定者を選定することはできない。 登録された住職予定者を住職後任者という。
住職でその寺院に住職予定者を登録した者は他の寺院の住職後任者となることはできない。 住職後任者は住職が欠けたときは登録順位に従い二週間以内に住職承認申請をしなければならない。 但し干与人及び総代の同意を要しない。 住職が欠けたとき住職後任者が教師の資格を有しない場合は代務者の承認を二週間以内に申請しなければならない、教師資格のない住職後任者が教師資格を得たときは、直ちに住職承認をしなければならない。 但し代務者の同意を要しない。 この場合の代務者は住職承認の日をもって任期満了とみなし宗務総長がこれを解任することができる。
住職後任者が左記に該当するときは登録は無効とする。
一、住職が欠けたとき理由なく二週間を経過しても住職承認を申請しないとき。
一、未成年で登録された者が満二三歳までに 師資格を得ないとき。
一、成年で登録された者が登録後三年以内に師資格を得ないとき。
一、他の寺院住職となったとき。
初めて承認を受けた佳職は一年以内に総代一人以上を帯同し、所定の日に祖廟において管長より認証書の交付を受くるものとする。 住職が左に該当するときは干与人から宗務総長へ届出なければならない。
一、死亡または三月以上不明のとき。
一、禁治産者、準禁治産者、破産者の宣告を受けたとき。
一、停止公権者及び剥奪公権者となったとき。
住職後任者が後任者を辞したとき、また後任者について不適当と認めた住職は、干与人及び総代の同意を得て登録の取消しを申請することができる。 但し住職欠員の寺院にあって登録の取消しを行う場合、成年者は本人の辞退書を、未成年者は親族代表者の同意書を添え、干与人及び総代の連署をもって宗務総長に申請しなければならない。
なお特別寺院以外の住職就任が世襲化されつつあるのも戦後の特色といえよう。

《『古類苑』宗教部、牧口泰存・増田海円『現行日蓮宗法令』(明治三八年)、『日蓮宗法規』(昭和八年)、『宗令』(昭和一一年)、『日蓮宗宗制』(昭和一六年)、『宗報』》
(風聞随仁・北村行進)

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