僧階
僧階
そうかい
僧侶の階位の意。
僧の学徳に応じて官から与えられる位階。
天平宝字四年(七六〇)良弁(華厳宗東大寺祖)慈訓(法相宗興福寺別当)の奏請により四位一三階が定められ、光仁天皇宝亀一一年(七八〇)僧綱職(僧尼の綱維〈規則〉を司り僧尼を統理し、諸大寺を管理するために設けた官職。
中国では沙門統・僧統・僧正・僧主の称を用い、わが国では僧正・僧都・律師を三綱とし、別に法務・威儀・従儀師を置いてこれを補佐せしめ、その職を行う所を僧綱所または綱所と称し、奈良時代に薬師寺を僧綱所としたのが初めである)を官位にあて、僧正を従四位・僧都を正五位・律師を従五位に配し、僧正は僧綱の最上位・僧都を僧綱第二位とした。
これより先、推古天皇三二年(六二四)観勒(百済の人・推古天皇一五年一〇月来朝・大和法興寺僧)を僧正に任じ従四位に配せられ、後に大・正・権の三に分けられ鞍部徳積が僧都に任ぜられたのが僧階の初めとされる。
桓武天皇は延暦一七年(七九八)無位・入位・住位・満位・法師位・大法師位の六位を定め八位から次第に三位まで配され、清和天皇貞観六年(八六四)には法橋上人位・法眼和尚位・法印大和尚の三階が制せられ律師以上の位とされた。
このように王朝時代から武家時代に至り明治の初めまでは官位に等しいもので、明治九年一二月新居日薩は太政官から権大教正に同一二年九月二〇日大教正に補され、日蓮宗で僧階が定められたのは、明治五年(一八七二)一〇月神仏各宗派の自治権を認めその統理をゆだねられたので、宗規宗制の認可(内務省)を受け、明治一六年二月「教導職試補選挙規則」を改正し、明治二九年六月一九日内務大臣板垣退助認可の『日蓮宗宗規』第三章第二五条で教師及び教師試補の称号等級が規定された。
僧階叙任には学歴と検定試験とがあり、昇叙についても規定がある。
沙弥にして教師試補たらんとする者は検定試験を受けなければならない。
試験には甲種と乙種の二種があって、甲種は私立小学校卒業もしくはこれと等しい学力を有すると認められた者。
甲種検定試験の科目は、日蓮宗大学中等科一年級入学試験の科目を適用し、乙種検定受験資格者は、年齢二五歳以上、日蓮宗大学中等科以上の者で依経通読・礼誦要文・本宗の教式・宗義の初門で、合格者は僧階選挙の申請が出来、僧階は教師試補検定試験に合格した者は四級試補に、日蓮宗大学中等部卒業の者は准講師に、同大学予科修了の者は大講師に、同大学卒業の者は僧都に叙せられ、昭和八年(一九三三)第二七宗会で「僧階叙任規則」が改正され、検定試験丙種に合格した者は四級試補に、乙種に合格した者は二級試補に、立正中学卒業または甲種に合格した者は准講師に叙せられ、その昇叙について四級試補の者は准講師まで、二級試補に叙せられた者は大講師まで、准講師に叙せられた者は僧都まで、教学又は事功により累進し、立正大学専門部宗教科卒業者、専門学校卒業者にして、宗教仏教学に関する学力検定試験に合格した者は、権僧都に、立正大学学部卒業者、帝国大学または大学令による大学の学部卒業者にして宗学・仏教学に関する学力検定試験に合格した者及び立正大学研究院卒業者は僧都に叙せられ、宗則第六号「褒賞規則」により昇叙されるが、「僧階叙任規則」(宗則第二四号)第三条による制限もある。
次に宗規で定められた(僧階義納金)につきその概要は大正九年(一九二〇)第六宗会において改正された島田勝存・増田海円共編『日蓮宗法規提要』宗則第一二号「宗費賦課徴集規則」第四条により義納額を、大僧正(一二円)、権大僧正(一〇円)、僧正(八円)、権僧正(六円)、大僧都(四円)、僧都(三円)、権僧都(二円五〇銭)、大講師(二円)、講師(一円五〇銭)、准講師(一円二〇銭)、一級試補(八○銭)、二級試補(六〇銭)、三級試補(四〇銭)、四級試補(三〇銭)と規定し、昭和八年第二七宗会(管長・風間日法総監小野日熹)が宗費改正に伴い僧院義納金もまた改正され、大僧正(四九円)、権大僧正(三九円)、僧正(二九円)、権僧正(一九円)、大僧都(一四円)、僧都(一〇円八○銭)、権僧都(八円八○銭)、大講師(六円八○銭)、講師(四円八○銭)、准講師(三円二〇銭)、一級試補(一円六〇銭)、二級試補(一円二〇銭)、三級試補(八○銭)、四級試補(六〇銭)。
但し第九条により法臈三〇年、世寿七〇歳以上に達し、寺院を退いた者にはこれを課さない(この査定は箇数単位を金○円也とした)。
戦後の僧階制度によれば昭和二一年度から同二三年度の僧階種別は大僧正、権大僧正、僧正、権僧正、大僧都、権大僧都、僧都、権僧都、大講師、権大講師、講師、准講師の一二種のほかに戦前の試補あらため補導および准補導の二種に分類されている。
同二二年度まではその僧階種別のうち基本年限をもって「僧階叙任規程」の定めにより、僧階義納金を上納して昇叙される者の僧階で、学歴に相応して准補導から講師の者は権僧都に、権大講師の者は大僧都まで昇叙限定僧階として認定された。
同二三年度は准補導から講師の者は大講師に、権大講師の者は権大僧都までそれぞれ昇叙の限定僧階として学歴に準じ改変された。
但し特別褒賞の者はその限定基準僧階の対象から除外されている。
同二四年度から僧階種別のうち、従来の准補導の僧階取扱いが廃止された。
同二五年度僧階に関連して補教制度が創設された。
このことは社会情勢に起因して寺族救済を目的として有髪の尼僧、即ち「寺庭婦人」を養成し補教講習三五日間所定の修練を実施し、講習終了後甲種または乙種の普通試験合格者は戸籍上改名して准講師の僧階に叙任されたという。新叙の特典制度である。
同二六年度は教師の僧階種別を大僧正、権大僧正、僧正、権僧正、大僧都、権大僧都、僧都、権僧都、大講師、権大講師、講師、准講師の一二種に定め、教師補試験の合格者の僧階を補導または補教の二種に定められた。この場合の補導とは男僧、尼僧をいい、補教とは有髪の尼僧をいう。
このうち乙種普通試験合格者で准講師に新叙された者以外の准講師の者と講師の者は大講師に、権大講師の者は権大僧都までそれぞれ昇叙限定の僧階として認定された。
但し特別褒賞の者の昇叙はその限定基準の僧階の対象から除外された。
同二九年度は教師および教師補の僧階を等級別に改め、教師の僧階等級を大僧正、権大僧正、僧正、権僧正、大僧都、権大僧都、僧都、権僧都、大講師、権大講師、講師、准講師の一二級に定め、教師補の僧階を補導または補教の一級二種に定められた。このうち補導または補教の者はそれぞれ特別褒賞に限り准講師の僧階に昇叙された。
但しこれらの者は寺院住職、教会担任の職に就任する権利は付与されないという定めである。
同三〇年度は従来の補導または補教の一級二種の級別を廃し、教師補試験合格者の僧階を補導の一級に定め補教の取扱いが廃止された。
ここで注意すべき点は従前の補教は僧階の名称であるが、現在の補教は僧階の名称でなく、有髪の尼僧で補教講習を終了した者の呼称である。
同三二年度は従来大講師叙任取扱いはそれぞれ管区宗務所長が管長の承認を得て取扱っていたが、この時点から庶務部所管扱いとして移管された。
なお乙種普通試験合格者の昇叙僧階の限定基準は大講師までと認定された。
特に注目すべき点は叙任審議会制度の発足である。
従来権僧正以上の僧階昇叙取扱いについては、管長の特別叙任で行われていたが制度実施により審議諮問を経て叙任取扱いとなる。
同三九年度は寺院に対応する住職の僧階に関連して僧階の新叙取扱いの者は満二〇歳の者と年齢を明確にし、更に叙任審議会審議諮問の対象範囲を、特別褒賞昇叙の者の僧階査定および必要に応じ、大僧都以下の者にも審議諮問の適用をうけることとなる。その起因は復帰、所属、転入宗等に対する僧階序列の均等をはかるためである。
なお離宗した者の僧階および除籍された者の僧階について喪失規定を明確にされた。
同四三年度は寺院住職、教会担任の認証制度に関連して新住職、新担任の僧階昇叙の付帯条件として祖廟登詣が義務付けられた。
同四四年四月僧階昇叙秩序のため僧階叙任内規が設けられた。即ち昇叙の算定基準の骨子である。
一二級の准講師から一級の大僧正にいたる昇叙の者の基本年限の明確とその功績、法労、布教、献金等、その他の特別褒賞を対象として点数制を設け審議査定する定めである。
従って基本年限に満たない場合の昇叙の者はすべて内規の適用をうけて査定される。
同四八年度は、中山妙宗法華経寺復帰合同に伴い、付帯条件をもって中山妙宗の僧階を本宗の僧階として一二級の僧階をそれぞれ認定された。
同五〇年度は僧階新叙された者はすべて祖廟登詣を必須条件として義務付けられる。
以上戦後の僧階に対する関連語の索引について、叙任とは出家戒に照らし僧侶の分限の位を授けられ、その階に任じ列せられることをいう。
教師とは『宗制』の定めにより准講師以上の僧階を取得した僧侶であり、能化と称し衆庶を教誨する寺院の住職、教会の担任、結社の教導各職の職分に任じ、「宗憲」を体し、儀式を執行し、教義を宣布する代表資格者をいう。
大僧正とは僧階の第一位であり本宗最高位の僧階をいう。
権大僧正とは第二級の僧階であり、叙任年齢満六五歳以上の僧侶をいう。
僧正とは第三級の僧階であり叙任年齢満五〇歳以上の僧侶をいう。
権僧正とは第四級の僧階であり叙任年齢満四〇歳以上の僧侶をいう。
大僧都とは第五級の僧階であり叙任年齢満三〇歳以上の僧侶をいう。
権大僧都とは第六級の僧階を有する僧侶をいう。
僧都とは第七級の僧階を有する僧侶をいう。
権僧都とは第八級の僧階を有する僧侶をいう。
大講師とは第九級の僧階を有する僧侶をいう。
権大講師とは第一〇級の僧階を有する僧侶をいう。
講師とは第一一級の僧階を有する僧侶をいう。
准講師とは第一二級の僧階であり叙任年齢満二〇歳以上の僧侶をいう。
試補とは戦前の僧階名称であり一級試補、二級試補、三級試補、四級試補に代り戦後、補導および准補導の名称になり学歴に准じそれぞれ叙任された僧階である。
これら僧侶の分限の位を授けその階に任ぜしめるための制度制定が即ち「僧階叙任規則」であり、次いで「僧階叙任規程」となり更に「叙任規程」と改変された。
この叙任に付随して僧階義納金制度が設けられ、戦後は「財務規程」に徴収規定され新叙冥加料、昇叙冥加料、昇叙義納金については僧階叙任内規の査定により上納義納することとなる。
このうち新叙とは宗制の定めにより出家得度の上、千葉県清澄寺において僧侶になろうとするものに与えられる許可の証(あかし)、すなわち度牒の交付をうけ僧籍台帳簿に登録された沙弥「(無資格者)」が所定の信行道場三五日間修練し、戸籍上改名または襲名を完了して最初に受ける僧侶としての分限の位である。
この一二級准講師の資格を授けられる者及び学歴に準じて一一級講師、一〇級権大講師、九級大講師、八級権僧都の分限の位を授けられる僧侶のことをいう。
次に昇叙とは現僧階に叙任された年月日を基準として基本年限をもって昇律される僧階をいう。
即ち准講師から講師まで五年、講師から権大講師まで六年、権大講師から大講師まで七年、大講師から権僧都まで八年、権僧都から僧都まで九年、僧都から権大僧都まで一〇年、権大僧都から大僧都まで一五年、大僧都から権僧正まで二〇年、権僧正から僧正まで二五年、僧正から権大僧正まで三〇年、大僧正については宗門最高位の僧階につき特別叙任内規を遵守して審議決定される。
なお准講師から権大僧正までのうち年限による昇叙の場合は昇叙冥加料といい、基本年限に満たない場合の昇叙は昇叙義納金という。
新叙の場合はすべて一律冥加料という。
次に教師補については宗制の定めにより教師補試験に合格した男僧、尼僧、有髪の尼僧の僧階のことを教師補といい、男僧、尼僧の者は補導の僧階をうけ、有髪の尼僧は補教の僧階をうけるのである。
但し宗制改正により補教の僧階取扱いが廃止された。
従って現在行われている有髪の尼僧による補教制度は僧階の名称でなく、補教信行道場において補教講習を終了した者の呼称である。
《『日蓮宗改正宗規宗則』、『日蓮宗法規提要』、『日蓮宗法規』、『国史大辞典』一二巻「本末制度」の項》
(中村錬敬・梅木良明)