視聴覚布教
視聴覚布教
しちょうかくふきょう
音と映像等による布教をいう。
近年半導体技術のめざましい進歩によりこの分野は多種多様に存在するが、布教の実用的利用法に基いた分類を図にすると左記のことが考えられるが、日蓮宗では以下の通りのみにとどまっている。
┌受像機─劇・広報・全国放送網活用・対談・名所・名物・報道源提供・ │ 案内・録画帯利用による檀信徒指導・行事(集団用) ┌有 線┼受信機─劇・時報による広報・社会啓蒙運動発言キャンペーン・ │ │ FM利用の法要(集団用/個人用) │ └電 話─人生相談・留守番電話利用説教・説教専門電話(集団用/個人用) 電 波┤ │ ┌趣味無線─ハム利用の趣味集団の活用 └無 線┤ └受信機──ラジオ利用の法用・団参 ┌三五ミリ┐ │ │ 劇映画・商業映画・記録・保存・広報(集団用) ┌映 画┼一六ミリ┘ │ │ │ └八ミリ 檀信徒団参・個人的利用度無数(個人用) │ ┌手動─記念・保存・ステレオ画像利用・法要利用(個人用) ├幻 燈┤ │ └自動─劇・寺観説明・歴史解説(集団用/個人用) フィルム┤ ├貼り紙─寺門前・街角・駅・電車中吊(集団用) ├写 真─記録・記念撮影・檀家台帳と併用・団参・寄付台帳(個人用) └実物投影機─ご遺文講義・読経指導・解析・団参・寺内説明(集団用/個人用) ┌劇画本・歌集・絵本・漫画集(集団用) 書 籍┤ └グラビア・週刊誌利用・かるた・双六(集団用/個人用) ┌録画帯┐ │ ├ カセット化により檀信徒用に活用は無限にある(集団用/個人用) 磁気帯┼録音帯┘ │ └増幅機─催物・法要等の演出に欠かせない(集団用/個人用) 録画円板─保存・携行に便利であり今後の媒体の最右翼(集団用) 複写機─資料保存・案内・広報(集団用/個人用) 芸術創作品─能・狂言・舞踊・芝居・演劇・茶道・華道・彫刻等無数
〔映画〕
日蓮聖人の伝記が劇的であるということ、聖人以後の僧や歴史的人物の中に熱烈な弘教者、信仰者が輩出したこともあって、布教伝道の材料として映画化しやすく、大正年間に活動写真が輸入されて以来、昭和のはじめから宗門の内外で盛んに製作された。
本宗関係では、妹尾朔がいち早く「鍋かぶり日親上人」「加藤清正」「楞厳丸」等の脚本を手がけ、大正九年(一九二〇)立正活映株式会社を設立した。
法華倶楽部の設立者小島愛之助は、在俗の身で映写機を担いで全国をまわり映画布教に精力的な活躍をしている。
大正一〇年には日蓮主義宣伝活動写真株式会社が創立されているし、大正一三には詔書普及日本会が活動写真布教を盛んに行った。
角田致敬、藤井教仁、山田一英等が中心となって「久遠の響」「日蓮聖人」をもって布教伝道を行っている。
映画布教が盛りあがったのは昭和六年(一九三一)の日蓮聖人六五〇遠忌前後である。
日蓮宗宗務院では社会課に映画班を置き「かくあればこそ」「久遠の響」「祖伝」「賢婦せき女」「明るい人生」「母の心」「楞厳丸」等をもって全国各地からの要望に応えて映画布教を行った。
そのつど二〇〇〇名から五〇〇〇名という檀信徒及び一般の観衆を集めている。
昭和五年四月には坂井智見が私費で一六ミリ映写機を購入し、毎日曜日に立正会館にこども会を開いて映画布教をしている。
昭和六年には中央立正映画協会が日本橋の身延別院内に設立され、伊藤海聞、本望順薩、中村錬敬らによって布教活動が行なわれた。
フィルムの在庫も豊富で、代表的なものに「祖伝」「桜吹雪(乃木将軍)」「身延攻」「竜口法難」「身延山実写」「楠公袂別」等がある。
特筆すべきは宗務院製作の「勅額拝戴」「祖道復古」という六五〇遠忌記録フィルムが現存していることである。
映画製作についてみると、日蓮宗宗務院では昭和四六年日蓮聖人生誕七五〇年を記念してその前後より本格的伝道映画を製作している。
記録の部としては、宗門ニュースとして昭和四四年度よりカラー一六ミリ、二〇分ものを毎年一本ないし二本を製作しつづけている。
その他の記録ものをあげると
「輝く日輪」二〇分。
「カピラ城を求めて」一五分。
「能登の題目村」一五分。
テレビ放映プリント「大荒行」一五分テレビ放映。
「七面山信仰」一五分テレビ放映プリント。
「沖縄の遺骨収集」一五分テレビ放映プリント。
いずれも東京NTV局ネットワーク「つねに合掌」二〇分である。
劇映画の部として、祖伝「御幼少の巻」四〇分昭和四九年度。
「求道の巻」三〇分昭和五〇年度作。
「立教開宗の巻」三〇分昭和五一年度作。
「弘道の巻」三〇分昭和五三年度作。
「明治座日蓮」九〇分昭和四六年度明治座公演の完全収録日蓮門下連合会と協同製作。
「前進座日蓮」九〇分昭和五四年度前進座日蓮門下連合会作、日蓮宗協力、前進座公演完全収録。
以上三作プリントは日蓮宗宗務院所有。
教宣の部として「正法のひかり」三〇分昭和四四年度作日蓮宗概略案内。
「久遠のひかり」三〇分昭和四七年度作、日蓮宗教義概略案内用。
「仏陀の生涯」二〇分昭和五一年度作、NTV局と共同製作。
民間で商業映画として日蓮聖人の御一代記を映画化したものも多い。
大正三年「日蓮聖人一代記」牧野省三監督、尾上松之助主演。
大正六年「日蓮聖人一代記」吉野二郎監督、沢村四郎五郎主演。
大正七年「日蓮聖人一代記」小林弥六監督、尾上松之助主演。
大正一一年「国聖日蓮」中川紫郎監督、嵐璃徳主演。
昭和四年「国聖大日蓮」古海卓二監督。
昭和一〇年「国難を叫ぶ日蓮」曽根千晴監督、早川雪州主演。
昭和三三年「日蓮と蒙古大襲来」渡辺邦男監督、長谷川一夫主演。
昭和五四年「日蓮」中村登監督、萬屋錦之介主演がある。
〔芝居、演劇〕
明治二年(一八六九)「日蓮上人」権之助、東京中村座、
明治一九年「日蓮大士真実伝」中村福助主演、東京中村座。
明治二三年「日出国五字旗風」中村福助主演、中村座。
明治二七年「日蓮記」団十郎主演、歌舞伎座。
明治三〇年大阪「福井座」日蓮記、「日蓮真実伝」山口定雄主演、東京座。
明治三四年「日蓮真実伝」鴈治郎主演、大阪浪花座。東京市村座「日蓮大士真実伝」。
明治三五年「日蓮記」福助。「日持聖人遠征記」芝鶴主演。
明治三六年「真実伝」中村福助主演、市村座。
明治三七年「日蓮聖人辻説法」八百蔵主演、歌舞伎座。
明治四〇年「法蓮華防火日蓮」時蔵、猿之助主演、浅草宮戸座。
明治四〇年「日蓮記」荒二郎主演、横浜賑座。
明治四三年「日蓮大士真実伝」懸小神主演、大阪春日座。
明治四四年「宗祖一代記」志賀之助主演、大阪八千代座。
明治四四年「日蓮大士真実伝」嵐芳三郎主演、浅草宮戸座。
大正五年「龍口日蓮」東儀鉄苗主演、東京有楽座。
大正五年「享和政談延命袋」菊五郎主演、市村座。
大正八年「那説法」勘弥主演、帝国劇場。
大正九年「法難」東儀鉄苗主演、明治座。
大正一三年「折伏の日蓮」沢田正二郎主演、浅草公園天幕劇場。
大正一四年「日蓮聖人」幸四郎主演、帝国劇場。
昭和四五年「日蓮」幸四郎主演、明治座
等があり、その他右団次、駒蔵、団九郎、納子、歌六、源之助、鬼丸、羽左衛門等が主演となって聖劇が上演されている。
〔幻灯布教〕
明治二八年既に身延山内に青年布教団が組織され、幻灯による布教が行われている。
以来全国寺院で電気紙芝居という呼び名で親しまれ、子供会、檀信徒教化等、平素の布教活動に手軽く利用された。
映画の普及と共に徐々に姿を消していったが、映画ばなれ、テレビばなれ、と時代の変遷を経て一九七〇年代以降は再び脚光を浴び、昭和五二年宗務院では七〇〇遠忌意識高揚をはかるため、全国宗務所にスクリーンと機材一式(自動幻灯機)を、単位寺院の布教の一助とすべくフィルムと共に完全配置した。
「日蓮聖人」一五分五八コマ、御一代記
「私達の宗旨日蓮宗」一三分五五コマ信徒常識。
「七〇〇遠忌にむけて」一九分六八コマ、遠忌説明。
「唱題行進のすすめ」一四分五六コマ、遠忌行事の主力を説明。
「団参のよろこび」二五分八二コマ、遠忌行事の主力を説明。
「日蓮聖人御一代記第一巻黎明篇」二八分九四コマ水彩画による映像。
「立正篇」三二分九九コマ。
「久遠篇」三〇分九六コマである。
〔放送〕
大正一四年、日本にラジオ放送が開始されたが、仏教教団がラジオ番組の中に体系的に編入しはじめたのは昭和七年以降である。
本宗においては、昭和五年既に管長・酒井日慎が、東北への巡教の途路、仙台放送局から、仏教の尊さ、人身の受け難いことを話し、日常生活の指針を放送している。
昭和六年六五〇遠忌記念放送が大々的に中継された。
日蓮宗宗務院は、全国寺院はもちろんのこと全檀信徒に対し、ラジオ放送通牒を発している。
放送内容は、第一部「日蓮聖人の夕べ」と題し、講演。
酒井日慎。
長唄、杵屋佐吉並社中。
舞踊、身延音頭。
劇「法難」新東京劇団が盛られ、第二部として、御遠忌法要池上本門寺の模様が全国中継された。
〔テレフォン説教〕
視聴覚伝道中、電波媒体利用の、特に電話回線を利用した三分間説教をいう。
企画開発は、日蓮宗宗務院護法伝道部で、昭和五〇年七月東京(03)540局に、昭和五三年五月大阪(06)575局に開設、共に2104(にちれんしゅう)と語呂合せの番号である。
全国市町村に電話が完全自動化された時点で、自らダイヤルを回し説教を聞こうとする求める心を育てる目的で、未信の若年層を対象とする。
電話回線利用、トーキー音源案内装置使用(同時一〇通話可能機器)。
毎週月曜日午前一〇時に話題交替、三六五日回転し、一ヵ年五二話エンドレステープ二〇〇秒を使用している。
当初開発費用は機器設置費二五〇万円、機器の保守、管理、テープ本格録音費二五〇万円であり、昭和五四年四月一日現在受信数、東京月平均三〇〇〇、大阪一〇〇〇である。
留守番電話、着信専用器、以外の本格的装置(一〇通話可能)の電話説教は、仏教界では日蓮宗が最初であり、放送された話は活字化して教師用教材として出版された。
〔ポスター〕
写真製版技術の進歩に伴って、七〇〇遠忌用のポスターは、イラストレーターの油絵を写真製版で製作したもので宗団としては画期的なものである。
またその目的は全国鉄、私鉄駅貼り、車内吊りを目論んだものであり、一ヵ年一枚の六連作という大部である。
図版