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十住心

じゅうじゅうしん #920

十住心

じゅうじゅうしん

真言宗教判空海撰『十住心論』(広論)及び『秘蔵宝鑰』(略論)等に述べられている。
この十住心は空海が大日経住心品、『菩提心論』に基づいてたてたもので、横の教判である顕密二教判に対して、竪の教判とされる。 十住心というのは一〇種の心のありかた、または一〇種の世界観という意味。
つまり十住心は一つには人間の心の発展の相を段階的に示したもので、菩提心展開論とも名付けられる格をもつ。
また同にこの順次第はインド哲学、儒教、教各派の思想の価値的位置づけを行うもので、宗教思想の総合批判をなしている。
十住心とは第一異生羝羊心、第二愚童持斎心、第三嬰童無畏心、第四唯蘊無我心、第五抜業因種心、第六他縁大乗心、第七覚心不生心、第八如実一道心、第九極無自心、第十秘密荘厳心をいう。
第一異生羝羊心とは因果の理を信ぜず、悪業を成じて悪果を感じ、愚暗無智にしてただ性と食との低俗な本能に支配される段階で、三悪道趣の心。
第二愚童持斎心とは外縁に由って菩提心が動き、人倫の道たる五戒十善を修しようとする段階、儒が配当される。
第三嬰童無畏心とは人界の苦悩を厭って上界(無色界)の楽果を求めて修行する段階、中の道、インドのバラモンが配当される。
第四唯蘊無我心とは五蘊の法は実在であるが、自己は仮であると観想し、無我の理法を悟る段階、声聞乗に相当し、の初門である。
第五抜業因種心とは悪行とその因たる煩悩無明の種子を、十二因縁観によって抜き、灰身滅智の空寂に安住する段階、縁覚乗に相当する。
第六他縁大乗心とは人法二我の執着を離れ、衆生の利益のために一身を献げて顧みない段階、唯識哲学を説く法相宗に配当される。
第七覚心不生心とは八不中道の観を修して心性の不生不滅を悟る段階、空観哲学を説く三論宗に配当される。
第八如実一道心とは即空即仮即中の三観を修して実相無作の一乗に住する段階、天台宗が配当される。
第九極無自心とは真如が随縁して染浄真妄無礙自在に融通する事々無礙を極める段階、華厳宗が配当される。
第十秘密荘厳心とは仏果の極信の段階で、真言宗が配当される。
前九を顕教、後一を密教といい、前九を劣、後一を勝と判ずる立場を九顕一密という。 これに対し前九は顕教であるが、その実義に至っては曼茶羅種性を開きたるものであるから同じく密教であるとする立場を九顕十密という。 広論たる『十住心論』は九顕十密、略論たる『秘蔵宝鑰』は九顕一密に立脚する。
日蓮聖人十住心批判は『顕謗法鈔』述作以降、多数の御遺文に繰返され、安然の『教時義』に説かれた十住心教判に対する五失を引用すると共に『法華真言勝劣事』等において『大日経』の七重または八重の劣を立てられている。
《『遺文辞典』教学篇「十住心」の項、『広説仏教語大辞典』『新版仏教学辞典』『岩波仏教辞典』「十住心」の項》

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