大乗
大乗
だいじょう
mahā-yānaの訳。
大きなすぐれた乗物の意味で、小乗に対する。
上乗・無乗・妙乗などとも称する。
乗物とは衆生を導いて解脱に達せしめる実践的教えをさし、これに大・小二つの教えがあるとする。
即ち利他行を主として、多数の衆生を救う教えが大乗であり、自利を主として個人の解脱のみを目的とする教えが大乗である。
また菩薩乗とも称するが、これは大乗の修行の実践者を菩薩と呼ぶことによる。
菩薩が無上菩提を求める心を発起し、六波羅蜜を行じて成仏の果をめざす実践が大乗である。
大乗の精神は釈尊の教えの中に存するが、大乗仏教運動が社会的に展開したのは、仏滅後五〇〇年、西紀前後の頃からであって、その頃新しい仏教運動が勃興し、既成の部派仏教を批判して小乗と貶称し、自らの立場を大乗と呼んだ。
既成仏教は僧院の内部に閉じこもり、その修行者は自己一身の修行に専念し、大衆を救済する熱意に欠けていたが、大乗仏教は利他行を標榜し、社会の大衆を救済すべきことを唱導したのである。
大乗経典には『般若経』『法華経』『華厳経』『無量寿経』『涅槃経』等、数百部以上の経が存する。
大乗教義の特色としては、小乗仏教が仏陀について、一世に一仏のみが出現するとし、現在は釈迦仏の存在のみを認めるのに対して、大乗仏教は三世十万に無数の仏陀が出現すると説く、また小乗仏教は衆生が悟りに達した位を阿羅漢と称し、それは仏陀の悟りと異なるものとするが、大乗仏教は一切衆生が成仏すべきことを説く。
更に小乗仏教は諸法の実在を説くが、大乗仏教は一切諸法皆空を説いている。
《『遺文辞典』教学篇「大乗」の項、『岩波仏教辞典』「大乗」の項、『日蓮辞典』「大乗」の項》