小乗
小乗
しょうじょう
サンスクリットのhīnayānaの訳。
劣乗とも訳する。
小さな劣った乗物の意味で、大乗に対する。
乗物とは衆生を導いて解脱に達せしめる実践的教えをさし、これに大小二つの教えがあるとする。
大小は価値の優劣を意味する言葉であって、大乗の立場から見て、克服さるべき立場にとどまっているものを小乗というのである。
声聞乗・縁覚乗・菩薩乗の三乗についていうと、声聞乗と縁覚乗は小乗に属し、菩薩乗は大乗に属するが、これにより小乗を声聞乗とも称する。
大乗・小乗という価値的な考え方は釈尊の教えの中に意味されているが、小乗の観念が社会一般の通念となり、教義的用語として用いられるようになったのは、仏滅後五〇〇年、西紀前後の頃に大乗仏教運動が興起してからであって、当時の新興の大乗仏教徒が既成の部派仏教を批判して小乗と名づけたのである。
従って部派仏教を一般に小乗仏教と称するが、小乗は大乗の側から与えた貶称であって、部派仏教が自称したものではない。
大乗小乗の相違について龍樹の『大智度論』(巻四)に、「声聞乗(小乗)は陋小にして大乗は広大なり。
声聞乗は自利自為にして仏乗(大乗)は一切を益す。
復次に声聞乗は多く衆生空(人空)を説き、大教は衆生空・法空を説く」というごとく、小乗は自利、大乗は利他、小乗は人空、大乗は人法二空というように対比される。
小乗と称される部派仏教は仏滅後一〇〇年頃、仏教教団が戒律に対する意見の相違から、保守的な上座部と進歩的な大衆部との二派に分裂し、その後、両派の系統が更に細かく分派して、全部で二〇部派が成立したものをこのようにいう。
諸部派は出家者を中心とする教団を構成し、多くの部派はアビダルマ(abhidharma阿毘達磨)と呼ばれる煩瑣な教義を述べた論書を作制して、それを中心に学問研究を行った。
《『遺文辞典』教学篇「小乗」の項、『日蓮辞典』「小乗」の項》