守護国界章
守護国界章
しゅごこっかいしょう
九巻。
最澄(七六七-八二二)著。
弘仁九年(八一八)撰述。
『正蔵』七四巻、『伝全』二巻所収。
『守護章』とも略称する。
全体を上・中・下三巻に分ち、その各々をまた上・中・下に分巻する。
徳一(七四九-八二四)の『中辺義鏡』三巻に対する破折の著である。
徳一は興福寺の修円について法相を修学し、常陸に筑波山寺を闢き、後、奥州の慧日寺に移った法相宗の僧であり、『中辺義鏡』三巻を著して天台法華の義を破折した。
最澄は、これをうけて本書を著し、徳一の迷妄を破し、天台法華の実義を顕彰せんとした。
上巻一三章、中巻二六章、下巻一二章の計五一章よりなる。
第一、謗法者の浅狭の三時教を弾ず。
第二、麁食者謬りて四教を破することを弾ず。
第三、麁食者謬りて八教を破するを弾ず。
第四、麁食者謬りて不定教を破するを弾ず。
第五、麁食者謬りて四教所詮の理を破するを弾ず。
第六、麁食者謬りて四教の位を破するを弾ず。
第七、麁食者謬りて三教の不同を破するを弾ず。
第八、麁食者謬りて四教を破するを弾ず。
第九、麁食者謬りて五味を破するを弾ず。
第一〇、麁食者謬りて止観を破するを弾ず。
第一一、麁食者謬りて絶待止観を破するを弾ず。
第一二、麁食者謬りて止観の三徳相摂を破するを弾ず。
第一三、謗法者大小交雑の止観を弾ず(以上、上巻)。
第一、麁食者謬りて妙法を破するを弾ず。
第二、麁食者謬りて迹妙を破するを弾ず。
第三、麁食者謬りて本妙を破するを弾ず。
第四、謗法者の浅き妙法を弾ず。
第五、麁食者謬りて蓮華を破するを弾ず。
第六、謗法者の浅き蓮華を弾ず。
第七、麁食者謬りて経体を破するを弾ず。
第八、謗法者の浅き経体を弾ず。
第九、麁食者謬りて法華宗を破するを弾ず。
第一〇、謗法者の浅き法華宗を弾ず。
第一一、麁食者謬りて経首の如是を破するを弾ず。
第一二、謗法者の偽訳の如是を弾ず。
第一三、麁食者謬りて菩薩の歎徳を破するを弾ず。
第一四、謗法者の浅き歎徳を破するを弾ず。
第一五、謗法者の浅き八大義を弾ず。
第一六、麁食者謬りて八大義を破することを弾ず。
第一七、麁食者謬りて仏教の十徳を破するを弾ず。
第一八、謗法者の浅き仏教の十徳を弾ず。
第一九、謗法者の浅き方便品科段を弾ず。
第二〇、麁食者謬りて方便品科段を弾ず。
第二一、麁食者謬りて一大事を斥くるを弾ず。
第二二、謗法者の浅き一大事を弾ず。
第二三、麁食者謬りて無二無三を斥くるを弾ず。
第二四、謗法者の浅き無二無三を弾ず。
第二五、麁食者謬りて三車の体を破するを弾ず。
第二六、謗法者の浅き三車の体を弾ず(以上、中巻)。
第一、麁食者謬りて一切の有情皆悉く成仏するを破するを弾ず。
第二、麁食者謬りて定性の二乗無余に入りて後回心するを破するを弾ず。
第三、麁食者謬りて報仏の智常を破するを弾ず。
第四、麁食者謬りて真如所縁の種子を破するを弾ず。
第五、麁食者偏えに有漏、無漏を生ずるを破するを弾ず。
第六、麁食者偏えに定教の前後を破するを弾ず。
第七、麁食者謬りて教の権実を破するを弾ず。
第八、謗法者偽りて五種性の差別を示すを弾ず。
第九、謗法者偽りて畢竟無性有情を建立することを弾ず。
第一〇、謗法者偽りて無種性有情の相を示すを弾ず。
第一一、麁食者謬りて別教一乗を破立するを弾ず。
第一二、謗法者偽りて法華の権実を示すを弾ず(以上、下巻)。
総じて上・中巻は主に天台の教判論・『法華玄義』・『法華文句』・『摩訶止観』等に関する問題を取り扱い、法相の三時教判等を評しつつ、三種法華・一念信解・四諦説・四教行人の行位・止観立行等を論じ、五時八教判等に対する徳一の謬見を弾破している。
下巻は定性二乗の成不成に関する天台・法相・華厳の教理論の問題を取扱い、徳一の一乗思想批判に対して反論したものである。
本書の論難をうけて徳一は『遮異見章』・『中辺義鏡残』等を著して反論を重ねた。
最澄と徳一のこの一連の論争を一三権実論争と称している。
日蓮聖人は、伝教大師によって権実が明瞭にされ、法華経の実義が闡顕されたとし、『依憑天台集』・『法華秀句』等と共に本書を高く評価されている。
《『遺文辞典』歴史篇「守護国界章」の項、『岩波仏教辞典』「守護国界章」の項》