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法華取要抄(一四五)

ほっけしゅようしょう #3831

法華取要抄(一四五)

ほっけしゅようしょう

日蓮聖人撰。
一篇。
系年については文永一一年(一二七四)五月二四日。あるいは文永九年五月二四日、文永一一年正月二四日等の諸説がある。
文永一一年五月二四日説は刊本『録内御書』(一六二二年刊)の奥書によるもので、これは後人の加筆であるが『録内啓蒙』(安国院日講)、『御書新目録』(中山本行院一四世日奥)、『境妙庵御書目録』(境持院日通)、『録内扶老』(禅智日好)等がこれに従っている。
ところが『祖書目次』(健立日諦)は文永九年に、『新撰祖書目次』(智英日明)は文永九年五月二四日に、『御書鈔』(弘経寺日健)は暗に文永一一年正月二四日の述作をほのめかしている。
文永九年説は文永一〇年四月の『観心本尊抄』の準備的段階の書であるとの見解によるもので、佐渡よりの第一書『富木入道殿御返』(文永八年一一月)が簡略であり「一大の秘法を此に初て之を弘む」とあることから、本書において富木書の具体的内容を論述されたものとする。
最近では日興写本(大石寺蔵)に文永一一年とあり、身延真蹟草案二本が曾存したことから、佐渡在島中に草案がなされ、身延入山後、早々に発表されたものと考えられている。
昭和定本日蓮聖人遺文』所収。
真蹟二四紙完、中山法華経寺蔵(重要文化財)。
一三紙断、身延曾存(日意・日乾目録)。
聖人五三歳の折、富木常忍に送り、兼ねて門下一同に示されたものである。
聖人みずから『法華取要抄』の題号を付され、聖人遺文中においても、五大部につぐ重要書とされている。
身延真蹟目録の内、日意の『大聖人御筆目録』には「以一察萬抄 法華取要抄ノ事也 一帖」、日乾の『身延山久遠寺御霊宝記録』には「以一察萬抄 十九紙」、日亨の『西土蔵宝物録』には「以一察萬抄 法華取要抄ノ御草案歟」とそれぞれ記されている。
この『以一察萬抄』は『法華取要抄』の草案と考えられる。
なお二種の身延本と中山本との関係については、身延本が中山本の草稿であろうと推測されている。
文永一一年二月一四日付で下された聖人佐渡流罪の赦免状は、三月八日、佐渡聖人のもとにもたらされた。
聖人は一三日に佐渡を発ち、二六日に鎌倉に帰られた。
四月八日、幕府は聖人を召喚して蒙古来襲の予想を糺した。
聖人は来襲の近いことを告げ、幕府を諫めたが、ここにおいても諫言は容れられず、聖人は五月一二日、鎌倉を発ち身延に入られたのである。
本書は入山後早々に発表されたもので、既に佐渡において草案がなされていたものを、身延において整束し法門の肝要を門下に開示されたのである。
題名の意は本書に「日蓮は広略を捨てて肝要を好む。所謂上行菩薩所伝の妙法蓮華経の五字也」とあるように、久遠釈尊の要法を開示し、この要法を授与されることによって末法衆生の救済が実現することを説示されるものである。
その内容の概略は次の通りである。
初めに諸経諸宗の勝劣を論じ、諸宗の誤謬を糾して、自己の正義を論証される。
次に法華経と諸経を対比し、教法権実に約して、諸宗を破し、法華最勝を説かれる。
更に教主と我らとの有縁無縁に約して、法華経の教主釈尊と一切の仏菩薩を対比し、諸仏菩薩は釈尊の所従であることを明かし、此土有縁の教主釈尊を捨てる諸宗の不を批判される。
次に在滅の傍正に約して、法華経が滅後末法衆生のために説かれたえであることを証される。
これは法華経を逆次に読むことによって、法華経の本意が実現されるとするもので、流通分の心をもって法華経を拝すれば、滅後末法衆生、なかでも日蓮等をもってその正とすることが論証されるのである。
そこで正像末三時の弘通に約して、末法に流布すべき三大秘法が明かされるのである。
三大秘法の説示はこれより先、文永一一年正月一四日の『法華行者値難事』の追伸に「本門の本尊と四菩薩と戒壇と南無妙法蓮華経の五字」とあり、これが本抄において「本門の本尊と戒壇と題目の五字」と明確に示され、『報恩抄』の「一には日本乃至一閻浮提一同に本門の教主釈尊を本尊とすべし。所謂宝塔の内の釈迦多宝、外の諸仏、竝に上行等の四菩薩脇士となるべし。二には本門の戒壇。三には日本乃至漢土月氏一閻浮提に人ごとに有智無智をきらわず、一同に他事をすてて南無妙法蓮華経と唱ふべし」へと継承されるのである。
最後に三災七難等の天変地異の興起は邪法の流布によるとし、この災難異変の続出や自身の値難は、要法の流布と上行等の聖人が出現する前兆であるゆえに、本門の三つの法門を建立し、一天四海一同に妙法蓮華経広宣流布は疑いないと述べて擱筆されている。
なお、近年、身延真蹟曾存草案二種の写本(「以一察万抄」「取要抄」)が『大崎学報』に翻刻された。
《都守基一「『法華取要抄』の草案について」『大崎学報』一五四号、『遺文辞典』歴史篇「法華取要抄」の項、『日蓮辞典』「法華取要抄」の項》

図版

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