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新成顕本

しんじょうけんぽん #2378

新成顕本

しんじょうけんぽん

顕本とは歴史上に応現せられた迹仏を開除して本地を顕すことをいう。 その開顕によって、最初に成道せられた久遠実成の本仏が明らかにされるが、その初めて実成し妙覚に到達されたを新成という。 つまり新成とは久遠の初めに悟りを開かれた最初のをいい、そのにもまた本地があると論ずるのを新成顕本という。 ち新成妙覚の仏にもまた本地の開顕があると主張することが新成顕本義の立場であり、これに対し顕本とは垂迹仏を開顕することであって、久遠本地を顕された根本の仏に、更に本地を論ずることは不可とする立場が新成無顕本義の立場である。
最初妙覚の仏にも本地があると主張する場合、その本地とは永遠なる理法としての根本真理、あるいは真如身、理法身であって、その真如身より応現し、垂迹すると見る立場が新成顕本であって、天台大師智顗が発迹顕本を主張して垂迹仏の本地を開顕しようとした立場とは矛盾することになる。 天台大師は『法華玄義』第七巻に、釈尊の分身による過去・現在・未来にわたる教化を説いて、それぞれの三世の諸仏の本地を次のように明かされている。 ち「若し過去の最初に証する所の権実の法を名づけて本と為す也。 本証已後方便をもって他を化し、三を開して一を顕わし迹を発して本を顕わすは、還って最初を指して本と為す。 中間の示現発迹顕本もまた最初を指して本と為す。 未来の発迹顕本もまた最初を指して本と為す。 三世すなわち殊なれども毘廬遮那の一本は異ならず。 百千の枝葉同じく一根に趣くが如し」(『正蔵』三三巻七六九頁b)と、三世諸仏にはそれぞれ顕本があると説かれる。 つまり三世諸仏の本地とは久遠の本仏を指すのである。 では、その最初の本仏、つまり元初ともいうべき妙覚の仏には、本地が存するのか否かという問いが発せられる。 それが新成顕本の有無である。 その問いは「問う三世の諸皆本を顕わすは、最初の実成は若し為すれぞ本を顕わさん」というものである。 それに対する天台大師の立場は「答う、必ずしも皆本を顕わさず」というもので、最初成道の仏には本地はないという、新成無顕本を標榜したのである。 この義を受けた妙楽大師も同義であった。
しかし、この最初成道せられた本地の有無についての論議は、日本の天台宗では喧しく論じられ、その影響を受けた日蓮宗の教学においても顕本論の重要な問題であった。 日本台では宝地房証真の『法華玄義私記』、宗要案立である『台宗二百題』、慧澄癡空の『法華玄義釈籤講義』、大宝守脱の『法華玄籤講述』等では、新成妙覚の仏には顕本はなしとする新成無顕本義である。 これらに共通している点は、法華経は三世の化導の真実を顕し、釈尊の事成の顕本を開顕することを目的としているのであって、法身顕本を明らかにするものでもない。 また最初の妙覚の仏であれば、顕すべき久遠本地はないというものである。 それは六重本迹已今本迹を正意とし、体用本迹を用いないからである。 しかし一方には新成顕本を主張する流れもあり、宝地房証真が『法華玄義私記』において四科を設けてそれらの説を破していることは、そのことを物語っているのである。 新成顕本の説を立てるものとして、柏原貞舜の『柏原案立』『自在房百題』『宗大口決』『台明匠口決』等がある。 また近代の浄土宗の学匠普寂は、『文句復真記』において新成顕本の立場から証真の説を批判するのである。
なお日蓮学において、この新成顕本の問題についてみると、八品派の慶林坊日隆が『開迹顕本宗要集』(日隆聖人御聖教第一巻)に「新成顕本」の宗要を設けて論述し、新成無顕本を主張している。 また什門の本昌日達も新成無顕本の義を取っている。 近世に至っては、一妙院日導は『祖書綱要』の中で新成顕本を肯定している。 また望月歓厚は「寿量所顕本覚三身論」(『大崎学報』第一三号)において、寿量品の五百塵点劫の久成を実説とすれば種々の欠点があるとして、新成顕本の問題を論及されている。 ち「久成実なれば新成のは経る処の塵劫なし従て顕本無かるべし。 新成無顕本台家事顕本の弱点の曝露に非ずや」とあって、塵点劫は仮説でなければ新成顕本が成立しないのであり、天台家で主張する新成無顕本は事顕本の弱点であるという指摘である。 そして五百塵点劫を仮数とすれば「一仏成道し終れば尽く始成に即して無始と顕るゝが故に、諸仏化事を同じくし、新成の仏は顕本なく古仏と長短の異るが如きことなし」と述べて、当家は五百塵点劫仮説、新成顕本が正意であることを示されたのである。
しかし、この新成顕本義の根本には真如身、理本覚身が想定されるものであって、本来の顕本義から逸脱したものといわねばならない。 台・妙楽両大師の如き新成無顕本義に立脚しつつ、更に日蓮聖人顕本義が検討されねばならないと思われる。

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