一代五時記
一代五時記
いちだいごじき
一八巻。
行学院日朝(一四二二-一五〇〇)の著書。
本書は明暦二年(一六五六)に一八巻九冊として刊行されている。
原本は身延文庫に所蔵されているが、その第一巻、第二巻の奥書には、共に「文明第三辛卯八月 日、於身延山久遠寺大坊誌之」とあることから、文明三年(一四七一)日朝五〇歳のときの著作と考えられる。
本書は天台大師の所判である釈尊一代五時説に従って諸経の解説とそれを依経とする諸宗の教義等について論述したものである。
その大半は引用文によって構成されている。
さて本書の大綱は次のとおりである。
第一巻は一代五時の根拠と華厳、阿含、方等、般若、法華涅槃等の五時の説法と、その経典の大綱が示されている。
第二巻は華厳時の擬宜の説法とその経典の解釈である。
第三巻は華厳宗の諸師の論疏とその教義とについて述べられている。
第四巻は鹿苑時の説法と、小乗宗である倶舎宗、成実宗、律宗の解釈がなされ、併せて諸宗の依拠とする論疏および戒律等について論述されている。
第五巻は方等時の教説が解説され、まず初めに法相宗の歴史と教義が示されている。
第六巻は浄土宗の依経とする浄土三部経、およびその教説内容が説かれている。
第七巻は同じく浄土教に関する説示であって、まず善導の教義が示され、更にその影響を受けた『選択集』に論及されている。
第八巻は真言宗の教義と善無畏・金剛智・不空・空海らの義が論じられる。
第九巻は前巻が東密であったのに対し、比叡山の真言宗(台密)について論じられている。
第一〇巻には真言密教はこれらの四教五時説に摂せられるかという問いに始まり、顕教と密教の問題が論じられている。
第一一巻は禅宗についてであって、禅宗の歴史である付法について論述がみられる。
第一二巻は禅宗に教義が存するか否かという問いが発せられ、依経とする経典等について論述される。
第一三巻は、五時説の般若時が解説され、まず三論宗の論疏とその教義について述べられるのである。
第一四巻は法華宗の名について解説がなされ、法華経こそ最勝の経であり、それを依拠とする宗が法華宗であることが明かされる。
そして日本の天台法華宗の祖である最澄の業績が論述される。
第一五巻は法華三部経の最勝性、第一六巻は本門の教主釈尊は三界の主であることが明かされる。
更に第一七巻では謗法堕獄の問題、第一八巻は、法華最第一のことが述べられて本書は結ばれている。
以上のことから理解されるとおり、本書は日蓮聖人の『一代五時図』に示された諸経・諸宗についての論述で、法華最勝を導こうとしているのである。
日朝は広く諸宗の典籍を渉猟し、そのことによって諸宗と法華宗との勝劣を明らかにしようとしたものである。