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迹門の十妙

しゃくもんのじゅうみょう #4938

迹門の十妙

しゃくもんのじゅうみょう

法華経の前半一四品の迹門に説かれている一〇種の妙をいう。
天台大師智顗は法華経の題号である妙法蓮華経を名・体・宗・用・教の五重玄義をもって解釈し、法華経が余経に勝れていることを明らかにした。 これが『法華玄義』一〇巻である。
この『玄義』釈名段に、「妙」の別釈として、迹門の一〇種の妙、本門の一〇種の妙が説かれている。 迹門始成正覚の釈尊の教化が説かれ、そこに一貫しているものは諸仏の悟りの内容を示す諸法の実相であって、その原理論に立脚して二乗の成仏がとかれる。 さてその十妙とは境妙・智妙・行妙・位妙・三法妙・感応妙・神通妙・説法妙・眷属妙・功徳利益妙である。
(1)境妙=境とは認識作用の対象、または対境をいい、この客観的対象は諸法実相にして妙ではないものはなく、のみよく究尽したもう不可思議境であることをいう。 その所観の境を十如是十二因縁・四諦・二諦・一諦・無諦の七境に分けて、権教と法華円教との説の差を比較しながら、対境は円融実相にして、妙であることを説く。
(2)智妙=このような対境を観察する能観の智慧について、世俗智より妙覚智に至る凡・聖一切の能観を二〇種に分かち、円教の智慧こそ、実相を認識する妙なる智慧であることを説く。
(3)行妙=教には種々の行が説かれるが、前三教の行は麁の行であり、円教の行は完全なもので円教の智慧に導かれて行を修すれば大涅槃に至ると説く。 その具体的な自行化他の行のすべてを別の行(次第の行)、円の行(不次第の行)の二種に分けて詳説し、法華円教の者は、不次第の行たる一心三観を用いねばならないと示される。
(4)位妙=蔵・通・別の三でも修行の階位を説くが、それは次第に断惑する麁の位階である。 円教に至っては法華経薬草喩品に三草(小薬草位、中薬草位、上薬草位)、二木(小樹位、大樹位)、最實事位の六位が説かれ、妙行を修することによって、中道の法を悟り、成仏ができるので、この階位は初後互いに融通しあって、階位そのものが妙であると説く。
以上は、始成正覚の自行の因を説いたものである。
(5)三法妙=前の境・智・行・位の四妙の因行によって顕される果徳、即ち仏の三種の功徳で、真性軌・観照軌・資成軌の三軌をいう。 真軌とは実相の、観照軌とは迷情を破して真を顕す智慧、資成軌とは智慧の働きを資成する万行である。 この三軌を『玄義』では總・竪・横・不縦不横・及び一〇種の類通三法等によって細説する。
(6)感応妙=衆正の感との応用との交流をいい、法華経には妙感(衆生)と妙応(仏)とがあって、譬喩品の「今此三界皆是我有其中衆生悉是吾子」とは正しく円の感応を顕したものである。
(7)神通妙=如来の身業不思議の作用をいい、仏は円教によって悟りに達して六神通を得、衆生化するに不思議の働きを示す。 この作用を生得、報得、修得、六根互用等に分けて説明する。 方便品の「唯以一大事因縁故出現於世」とあるのは、種々の所作がすべて自証の妙用たることを示している。
(8)説法妙=如来の口業不思議の作用を説くものであって、前の神通妙と共に化他の妙用に属する。 この妙用を九部一二部、逗縁、所詮、円妙の法等に約して説き、法華円教は能詮、所詮倶に妙であるという。
(9)眷属妙=如来に親近し臣順する者を眷属という。 如来の教益に浴して仏の眷属となるべき類を理性眷属、業眷属、願生眷属、神通眷属、応生眷属の五種に分つ。
(10)功徳利益妙=所化の受ける功徳利益をいう。 この利益に遠益、近益、今経の利益とがある。
以上、迹門の十妙は釈迦一仏の自行化他の始終を概括したもので、境智行位の四妙は自行の因、三法妙は自行の果、感応・神通・説法の三妙化他の能化、眷属・利益の二妙は化他所化に属するのである。 そして、これらは爾前教の十麁に対して、法華所説の十妙を顕揚したものである。
日蓮聖人は『法華題目抄』に「妙」字釈を記すに当って、「迹門の十妙」の語を用いられる(定三九七頁)。 しかし聖人は『十章鈔』に「真実の依文判義は本門に限るべし」(定四八九頁)と述べられることなどから、迹門の十妙は、本門の十妙に至る一つの階梯であり、本門の立場から解釈されるべきものとされた。
《『遺文辞典』教学篇「迹門の十妙」「十妙」の項、『日蓮辞典』「本迹の十妙」の項》

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