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出開帳

でかいちょう #831

出開帳

でかいちょう

社寺が秘蔵する霊あらたかな神を人々に礼拝させ、その霊験ある神仏との結縁を目的とする宗教的行事を開帳という。
開帳は開扉(かいひ)・啓龕(けいがん)などとも呼ばれ、唐の憲宗帝元和一四年(八一九)に釈迦仏の指骨の一節を開帳したのがその起源とされており、わが国においても既に鎌倉期には行われていた。
その一例として、嘉禎元年(一二三五)光寺を写した三尊を京中の僧侶が競って礼拝したということを『明月記』(藤原定の日記)は記している。
開帳は初め宗教的な行として行われていたが、のちには社寺の修造費を得るために、更にはその経営費を捻出するために、ち募財という側面に主眼が置かれ実施されるようになっていった。
とくに江戸代に入ると、こうした目的をもった開帳が三都と呼ばれる江戸・京都・大坂を中心に盛んに行われるようになった。
江戸代実施されていた開帳には、社寺の年中行事の一環として縁日や法会等の節に一日―数日間行われる短期間のものと、原則として三三年に一度五〇-六〇日間行われる長期間のものとがあり、後者の開帳にそうした募財を目的とする傾向が強くみられる。
そして、この長期開帳には、開帳神仏のあるその社寺で行う居開帳と、他の社寺を開帳場所(宿寺)としてそこに出張して行う出開帳とがあった。
開帳は江戸時代に全国各地で頻繁に行われるようになったが、なかでも江戸での開帳が質量ともに抜群であった。
江戸での最も古い開帳例は承応三年(一六五四)の浅草浅草寺の開帳居開帳であるが、出開帳については、常陸真福寺が寛文一〇年(一六七〇)に行ったのが最も古い。
日蓮宗では宝永二年(一七〇五)の京都本圀寺の本所法恩寺での出開帳が最も早い例で、居開帳は享保一八年(一七三三)に武蔵国大久保の法善寺が七面明神を開帳したのが最初であった。
江戸代において実施された開帳をみてみると、数量的には表のようになる(括弧内の数字はそのうち日蓮宗寺院開帳)。

宗派別の開帳回数では、日蓮宗二八一回、天台宗二五七回、新義真言宗二一一回、浄土宗一七〇回などを数え、日蓮宗が最も多い。
このうち出開帳回数については、日蓮宗一八一回、浄土宗九二回、新義真言宗八六回、天台宗五三回などであり、これも日蓮宗が日立つ。
江戸における開帳は、日蓮宗の開帳が最も積極的に実施されており、とくに出開帳にその傾向が著しいといえよう。
次に出開帳社寺の国別分布は、北は東北地方から南は九州地方まで三八ヵ国に及んでいるが、開帳延回数からみるとその中心は、武蔵(一五四回)、相模(八六回)、下総(七六回)、山城(六六回)などであった。
これに甲斐(三九回)、常陸(二九回)などが続く。
日蓮宗の場合も地域的には同様であるが、延回数の上では下総(三九回)、相模(二九回)、甲斐(二三回)、武蔵(二二回)、山城(一四回)の順であり、以下駿河・佐渡(一二回)、安房(一一回)などと続いている。
また個別社寺の出開帳については、下総の新勝寺の一二回を最高に、山城清涼寺・相模鶴岡八幡・信濃善光寺などを含め五回以上の社寺二一を数え、このうち日蓮宗寺院が八ヵ寺を占めた。
甲斐身延山一〇回、下総法華経寺九回、相模(松葉谷)妙法寺六回、山城本圀寺五回、下総本土寺五回、下総法宣寺五回、佐渡根本寺五回、甲斐(小室)妙法寺五回である。
別・個別寺院別に日蓮宗の江戸出開帳をながめると、そこには日蓮聖人と深いつながりのあった国々からの、そして聖人の霊跡に結びつく本山や霊跡由緒寺院出開帳が盛んであったことが知られる。
日蓮宗の江戸出開帳は、日蓮聖人の霊跡に結びつく有名寺院を中心に、江戸民衆の祖師信仰に支えられて展開されていたといえよう。
身延山の開帳は清涼寺・善光寺・成田山とならび江戸出開帳四天王の一つともてはやされ、『武江年表』は「甲州身延山祖師開帳に付き、江戸到着の日、迎ひの人数品川より日本橋迄つづく。何町講中と書きたる旗幟あまた立つる」と記してもいる。
最後に出開帳社寺の江戸での開帳場所(宿寺)であるが、これは本所回向院・深川永代寺が代表的な場所として、出開帳社寺の宗派にかかわらずよく利用されていた。
ただ日蓮宗寺院の出開帳に限っては、江戸の同宗寺院が必ず利用され、それは原則として本末関係・法類関係などによるものが多かった。
比較的よく利用された寺院は、浅草近辺の寺院で浄心寺・玉泉寺・本法寺・本蔵寺・正覚寺・妙音寺などである。
《比留尚『江戸の開帳』、高木豊「日蓮宗の開帳と縁起」『大崎学報』一一三・四合併号、北村聰「江戸における日蓮宗の開帳」『日蓮宗の諸問題』、同「開帳と講中」『立正史学』四一、『国史大辞典』三巻「開帳」の項

図版

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