財務
財務
ざいむ
戦前の財務は宗務院の創立当初より戦時中迄と広範囲に亘る。
明治二九(一八九六)年六月二〇日発令 宗令第一号『改正宗規宗則』、大正元年(一九一二)一二月一日刊行『日蓮宗法規提要』 日宗新報社発行、昭和八年(一九三三)八月二五日発行『日蓮宗法規』等の資料によれば、大正末期頃迄は財務はすべて会計という呼称で通って来た。
即ち宗規においても会計・宗則においても会計規則と称している。
ただ職員の条に財務課長の名が見えるのみで、現状の財務部となったのは昭和に入ってからである。
要するに宗門寺院は宗費を負担し、このほか僧階義納金・住職義納金・修法師義納金・度牒礼禄・法籍編入料・志納金等の年度収入を基本となし、宗務院の全運営費を取扱ったのが会計であり、これに対して会計監査の制度を置いた。
現在の財務内容と比較すると、数字は微々たるものであったが、その中で特筆すべき点は支出の面で霊跡由緒寺院に対する護持顕彰費が大なるものであった。
これは第三八宗会(旧制)において決議された三派合同により定められたものである。
大本山・本山級は一ヵ寺四〇〇円、中小本寺は末寺数により一ヵ寺一〇円宛と定められた。
第二次世界大戦に突入、遂に本土空襲の危険に直面し、宗務院の重要書類保全のため殊に財務部の収納台帳等は立正大学図書館に移し、更に危険なため身延の山中に疎開を必要と決した。
運送の途中甲府遠光寺に一泊、その夜の空襲で一切焼失した記録を残さなければならないことは遺憾なことである。
中でも未納宗費の台帳を失ったため多数の寺院の未納が皆無とならざるを得なかった。
終戦直前の身延山における宗会開催について、財務部における費用捻出の困難さは到底他のはかり知り得ないところである。
会計及び会計監査に関する典拠
大正元年の『法規提要』に
第二章 「寺法」 第十九条 寺院ハ宗費ヲ負担スべキモノトス
宗則第十二号 宗費賦課徴収規則
同 十三号 会計規則
同 十五号 会計監査規則
会計監査員
『日蓮宗法規』昭和八年版
第二条 財務課長一人 会計監査員三人
第八条 会計監査員ハ甲六等已上ノ寺院住職中ヨリ管長ノ特命ニ依リ定メ、任期ヲ満三年トス
第七条 財務課長ハ常置委員ガ末寺乙一等以上ノ住職ヨリ三名ノ候補者ヲ選ビ其ノ中ヨリ管長ノ特命ニヨリ定メ任期満三年トス
宗費賦課徴集規則
『日蓮宗法規』昭和八年版
宗則第十五号 宗費賦課徴集規則
第二条 寺院ノ負担スべキ宗費ハ其年度ノ歳出予算ニヨリ之ヲ定ム
第三条 寺院賦課金ハ各寺院ノ割賦箇数ニヨリ之ヲ定ム
第四条 各寺院ノ割賦箇数ハ各寺院ノ収入査定額ニヨリテ定メタル基本箇数ニ別表寺院等級別ニ依ル附加箇数ヲ加へタルモノトス
第五条 各寺院ノ有スル箇数ノ基本ハ金拾円ヲ一箇トシ、拾円ヲ以テ各寺院ノ年収額ヲ除シタル数ヲ以テ之ヲ定ム 但シ拾円未満ハ四捨五入ノ法ニ依リ計算ス
第六条 各寺院ノ割賦箇数ノ総和ヲ以テ其年度予算ニ依ル賦課金総額ヲ除シ、其年度賦課金単位一箇ニ対スル金額ヲ定ム、但シ厘単位未満ハ一厘トシテ計算ス
寺院賦課金
第七条 前条ノ単位一箇ニ対スル金額ヲ各寺院ノ割賦箇数ニ乗シテ得タル金額ヲ各寺院ニ対スル年度賦課金トス
僧侶ノ負担金
第八条 僧侶ノ負担スベキ宗費ハ左ノ如シ
一、僧階義納 大僧正四十九円(以下略)
二、住職義納
三、修法師義納
四、検定試験義納
五、度牒礼禄及法籍編入料
財政に関する事務、即ち現行宗制中日蓮宗規則第四章の章名の「財務」は、宗費(寺院、教会、結社の賦課金、檀信徒の志納金、僧侶先達の義納金)の賦課徴収、資産の区分、基本財産の設定及びその変更、基本財産の管理、基本財産の処分等、財産目録の作成、経費の支弁、予算の編成、予算の区分、予備費の設定、予算外の支出、予算の追加及び更正、臨時会計又は特別会計の設定、決算の作成、歳計剰余金及び予算外収入の処置、会計年度に関する事項といった事務を総称している。
次にその他の法令に規定されている「財務」について例示してみると、大蔵省設置法三条一号の「国の財務」の財務は予算、決算、租税、国有財産等に関する事務を総称するものであり、また地方自治法二編九章の章名の「財務」は予算、収入、支出、決算、契約、出納、財産に関する事項を、地方公営企業法三章の章名の「財務」は予算、決算、出納、企業債、資産、契約等に関する事項を総称している。