話の構成
話の構成
はなしのこうせい
言説布教を、言語及び話の一定指向上の集合として考えた上での構成並びに形式をいう。
一般に言説布教は、話の集合と見ることができる。
その場合、布教者と受容者との相互関係は、話を媒介として成立していることになる。
つまり、〈布教者―話―受容者〉という形式をとる。
そして、これは布教者から話へ、話から受容者へという、二つの構造に分析できる。
この時、布教者から話へと形成していくことを、内容形式といい、その話から受容者へ化導していくことを、組立形式と呼んでいる。
(一)内容形式=内容形式は、〈素材―話集―話材―話題〉として形成される。
素材とは、一般的な自然的社会的事象を、客観的に把握したもので、これらを宗教的仏教的に吟味し、収集していくところに話集が成立する。
そして、その話集は、再び日蓮聖人的認識を通して話材に転換され、さらに信仰的立場より話題として単位化されて、初めて布教者から受容者へ伝達すべき内容性を持つ。
即ち話題は言説布教の肉に当り、布教者という個人的立場を、普遍的な内容に変換し、言説布教を言説布教たらしめる大きな意義をもつものである。
しかし、この話題は布教者の内面的思考から醸し出された論理上の内容に属する。
そのため布教者は、受容者等の具体的な言説布教の場において、この話題を伝達上の形式としなければならない。
この操作が具体的に言説布教を形成することになる。
これを組立形式と呼んでいる。
(二)組立形式=これは布教者によって、話題を円滑に受容者に伝達するもので、話題の組立順序法と言説技法に分けられる。
(1)組立順序法=言説布教は大局的に見れば、正論法(小さな疑問を提示しながら、順序立てて話を展開していく方法)、逆論法(結論を先に述べてから、それを解明しながら話をすすめていく方法)、要論法(要点を先に提示してから、正論法で話をまとめていく方法)、伏論法(結論の一部だけを述べて興味を起し、受容者の期待を引きながら話を展開する方法)の四種類がある。
これらは言説布教に於ける話の仕方であって、具体的には二段法・三段法・四段法・五段法として話題を組立てて、初めて言説布教に於ける話の教案が構成される。
即ち二段法とは、要と結の二段によって構成し、論理内容を要約的にまとめて述べ(要)、話を結ぶ(結)というように、落語の小咄的組立をいう。
三段法とは序論(序分)・本論(正宗分)・結論(流通分)の三段による組立てで、仏教の経典論疏は、これによって科段されることが多い。
しかし、この組立法は論理を集約的に理解する上では有効的であるが、言説布教上においては、端的になりすぎる点がある。
次に四段法とは序論(起)・本論(承)・副論(転)・結論(結)の四段の組立てで、序論で言説布教の導入への話題を組み、本論でテーマを構築し、その内容を副論で具体化して、結論へと勧める方法である。
言説布教の組立法としては一般的である。
さらに五段法とは挨拶・端緒・綱領・例証・結論の五段組立法で、三段法、四段法を言説布教上で、もう一つ具体化したものである。
即ち三段法の序分と四段法の序論を、挨拶(心身交流・発音談義)と端緒(誘引・導入)とに分け、綱領で本論となるるテーマ(序説・法説)を提示し、例証(譬喩説・因縁説)で本論の主意を、さらに理解させ結論(撮要・総結・勧説)で結ぶという形式である。
これは法華経の三周説法の形態に準拠したもので、言説布教をより細分化し具体化した組立法といえる(特別圓環五段法については省略す)。
話はこうした組立順序法に配列されて、言説布教に於ける話の組立、教案ができるといえる。
(2)言説技法=話の組立が組立順序法により教案として成立した後、それを受容者に的確に伝達する技法をいう。
これは主動的な「説得の演繹十法」と補助的な「言葉の修辞六法」とがある。
即ち説教の演繹十法とは、(イ)否定法(五濁悪世の世相を否定し、正法の立場より破折していく方法)(ロ)正当法(自らの正当性を好ましい言葉で主張する方法)(ハ)比較法(二つ以上の類似的内容語句を挙げて比較対照し、相互の内容を明確に分別して話す方法)(ニ)設問法(聴衆に質問を発し、考えさせながら答えを出しつつ話をすすめる方法)(ホ)転化法(普遍的な価値やシンボルを転用し、それに集るカリスマや尊敬を、布教者自身に転化させながら話す方法)(ヘ)保証法(絶対者・権威者・先師等の言葉や論理を、話の説明や主張の保証、又は証明として使う方法)(ト)大衆法(布教者が大衆の中の一人として、俗化した立場で説いていく方法)(チ)連帯法(他の人の行動を例に挙げ、婉曲的に連帯感を訴える方法)(リ)反復法(ある一つの事を、多面的な方向から繰返し反復しながら論証する方法)(ヌ)単純法(むずかしいことを、くどくど話さず単純なテーマにしぼって話す方法)。
また、言葉の修辞六法とは、(イ)形容法(名詞に形容詞を加え、動詞を丁寧に用いる方法)(ロ)重句法(同一の語句を重ねて用いる方法)(ハ)輪廻法(めぐりめぐって元へ戻る方法)(ニ)逆説法(故意に逆説して言葉と反対の感じを起させる方法)(ホ)譬喩法(真の意味をそのままいわず、他の事柄に譬えていい表わす方法)(ヘ)模声法(物体より発する音響を声に写す方法)。
要するに、言説布教は、こうした「演繹十法」と「修辞六法」を、多岐にわたって多用化していくところに、その力動性を生むことができる。