法類制度
法類制度
ほうるいせいど
同じ学系を汲む寺院組織の規則、元和、寛文年間(一六二〇-七〇)に亘って、関東、京都各地に十数箇の檀林が増設された。
一方、学徒の増加に伴い諸檀林では学徳すぐれた有力な能化を中心とする学系(学閥)が形成され、やがて教団内における一系統を成立させた。
それが法類、法縁である。
特に飯高檀林が隆盛になるに随って、全国各地から雲集した学徒を養成する便宣上、学寮が開設され、寮頭の指南を中心とする集団ができた。
学寮の最初は円是日耀を谷頭とする竜眠庵が中台谷に、次いで寛永九年(一六三二)に壽量日祐の築いた向城庵が城下谷に、次に寂円日通が松和軒を松和田谷に開き、ここに三つの学系が成立した。
そして松和田谷の寂円日通と中台谷の一円日脱が、身延久遠寺に入寺して以降、この両谷は以後、身延久遠寺を出世寺と定め、本山住持権を獲得して一大勢力を持つに至った。
中台谷はその後、日脱を中心とする脱師法類と日潮を中心とする潮師法類が派生する。
また城下谷の一乗日養が池上本門寺に入寺して以来、同谷は本門寺を出世寺とし、のち池上三法類の妙玄庵・樹下庵・中道庵、堺法類が派生した。
また中村檀林では京都妙顕寺・本圀寺を出世寺とし、東法眷に境・親・達師法類が、西法眷に奠・日莚師法類が派生し、更に小西檀林の小西法類、西谷檀林の鏡師法類が生じて、教団内に確固たる法類と出世寺が制約された。
なかでも法類は中世の門流にかわる近世教団を組成する原動力となった。
特に飯高三谷の名は天下に響くようになり、互いに鼎立して学徒を養成し、弟子は師匠の出た学寮に入るようになり、学系が固められた。
学系が固定するにつれ、ある寺の住職はどの谷の出身者に限る、ということや修業階梯による出世寺格が定まるということが制度化し、ここに法類制度が発生するに至った。
即ち谷毎に「持寺」「出世次第」「出世寺」が固定して、身延山は中台と松和田の二谷持ち、池上は城下谷持ちとなった。
かくして身延門流とか、比企池上門流とかいう従来あった門流意識に、新たにできた学系意識が加わり、あるいは前者が後者の底流であったともいえるが、法類制度は次第に厳しさを増した。
法類が檀林の谷から発生する要因の中には、不受不施対策があったと想定できる。
身延や池上のような大山から不受不施の烙印を押され、官に訴えられると小寺の住職はひとたまりもなく処断され、寺もつぶされてしまう。
その例は僅少ではなかった。
そうした状況下では自衛策として強い組織の中に身を置いて、その庇護を受ける必要があった。
更に宗教を統制下に入れた徳川政策が、寺院に対して法統相続制の確立を望んでいたので、いわゆる寺院の「出世次第」は法類制度と不可分なものとなったのである。
かくして明治初年、飯高が廃檀になるまで身延、池上の法灯は城下谷出身で、飯高の化主についた人が相続することに定まっていた。
大正一二年(一九一三)五月改正、昭和八年(一九三三)施行の日蓮宗法規中、宗則第二七号「法類総代、組寺総代及び末寺総代選定規則」第一条に、寺院は法類総代、組寺総代、末寺総代一名または二名を選定し、干与人連署をもって印鑑相添え、宗務所長を経由して宗務院へ屈出ずべし、その異動のときもまた同じく、以下二条より六条に定められている。
右条文中法類総代とは当該寺院の所属法類寺住職中より選定するとあり、住職の進退並びに寺有財産の異動、その他の事項に関し当該寺院に干与するものとすると規定されている。
昭和二四年宗務総監肉倉宝運は、その施政方針の中で「大本山、別格本山等の階級的寺格制を撤廃して、むしろその本質的内容を尊重する信仰の本然に帰すうせしめたい」とのべ次に「法類が宗制上に制度化されているため、その本来の“良さ”が失われ、政治的にもまた寺院紛糾の根元的にも、その悪幣を除去すべく、法類制度を廃止し、法類の“枠内”に抑制されて人材登庸の好機を逸する憾みを無からしめんとするものであります」とのべた。
明治三三年(一九〇〇)わが国の宗教行政が確立され、法律として昭和一四年に認可制度の宗教団体法が公布され、その後昭和二〇年に勅令として宗教法人令が制定され、次いで昭和二六年四月三日法律第一二六号をもって宗教法人法が公布された。
なお従来の法類総代は、この規則施行を機会に改廃されて、干与人制度となった。
しかるに従前の法類総代がそのまま当該法類寺間の干与人となっているケースが多かった。
近年に至って地域的交流または友人、知人等をもって相互干与する寺院が目立つようになった。
このようにして法類、法縁はそれぞれ縁頭のもとに団結しているように見られるが、次第に親睦会的な存在に移行しつつあると思える。
《影山堯雄『日蓮教団史概説』、執行海秀『日蓮宗教学史』、『改新宗報』(昭和二四年)、『日蓮宗宗規』(昭和八年版)、『祖道復古』、石川存静『池上本門寺史管見』、星野清一『宗教法人法』》