挫日蓮
挫日蓮
ざにちれん
一巻、著者不明、寛延四年(一七五一)刊。
これを破した著作に立真済撰の『挫日蓮笑解』一巻がある。
『挫日蓮』の序に「此書ヲ著シ逆徒ヲ責メ挫日蓮ト題スト」、跋に「此書既ニ成ヌ、日徒ノ暴悪ヲ略記スルコト此ノ如シ、悉ク議セバココニツクスベカラズ、一ヲ以テ万ヲ察セヨ、豈ニ勧善懲悪ノ一助ニアラザランヤ」を本意としている。
この内容を一一項目に分けて、日蓮聖人の遺文等を引用し破斥を加えている。
次に内容を述べるに、
(一)「抑も悪心をいだき天下にあだすべき邪法と謂は日蓮徒にあり」と、日蓮聖人の遺文、『王舎城抄』・『撰時抄』・『阿仏房抄』・『諫暁八幡抄』の文から、天子国を咒悪口し、天子等を敵としていると難じている。
(二)『諫暁八幡抄』等の文に、日本国の諸社は皆悪鬼邪神也とし、我国は神国であり、そこに生れ神恩を被っているに何故に悪くいうかと難詰している。
(三)『報恩抄』・『本尊問答抄』・『諫暁八幡抄』・『撰時抄』・『高橋抄』・『秋元抄』・『法蓮抄』・『中興抄』・『種種御振舞御書』等、また『中正論』等の文にて、日蓮宗を信受しない歴代の天皇を大罪人・弘法慈覚等の先師先哲を無間地獄に堕る。
爾前無得道の法門八宗十宗を邪法である。
またそれを信受する者すべて邪人で、日蓮宗以外の人すべて大罪人である。
念仏・禅宗等の僧の首をはね、寺塔を焼かねば日本国が亡ぶ等の文を引き、その文を羅列している。
(四)日蓮宗の日如は、我宗以外を信ずる天子将軍は畜類禽獣であり、他宗の人命を取り、院・在家等を焼くことは題目を唱えるより大善根と述べている。
これ外道朝敵でないかと難じ、更に法華経を信ずるもの磔(ハリツケ)獄門遠島等の難にあうを喜ぶは天主教(キリシタン)と同一派と詰問し、
(五)『王舎城抄』「焼亡の事、委く承て候事、悦に入て候等云云」の文を引き火災盗賊が絶えないのは日蓮徒の説法のためと難じている。
(六)下賤の子・土民である日蓮が『撰時抄』に「日本国の棟梁なり」と述べているが、これ穢多の子が天子将軍を軽んじている大悪人であると難じ、
(七)「代々の天子将軍外道を悪せ玉いて追罰度々に及べり」と日蓮宗に対する追罰の例を次記の如くあげている。
(1)延慶年中院宣に依って天下の日蓮党追却せらるる事、(2)天文年中に勅宣下さる日蓮凶徒追罰の事、(3)明暦年中の勅命日蓮党を以て未施行と名け宗外と号す事、(4)敬白起請文の事、(5)平信長奉書による浄土宗と法華宗との宗論、(6)その他日蓮宗との宗論並びに時の政府の日蓮宗を断じている例をあげ、日蓮宗が各宗論等に負けている、これ天下の敵邪法であり天主教と同じと難じ、
(八)安土宗論に日蓮宗が勝たると邪正問答書等に述べている事に対し、四つの文を出し打消し、朝敵国敵天主教の本人としている。
(九)日蓮宗を法華と名のるは、これ天台宗の名で、それを盗むは大盗賊であると難じ、
(一〇)『阿仏房抄』「念仏は父母を無間地獄にをとす法也」の文を引き、念仏を無理に悪口する文を取り上げ、逆に日蓮こそ大罪人であるとし、
(一一)久遠寺に根本堂を設け、魔法を行って天下を覆えそうとしている朝敵と難詰し、最後にまとめとし、日蓮党は、時の政府の問答に負けたるを勝とし、悪口雑言し、歴代の主を大罪人とする天下の大敵逆臣であるとし、神田白竜子の武門劇の言葉「日徒の僧は徒党を結んで天下に怨すべき邪宗なり」の文をあげ結んでいる。
以上本書、日蓮聖人の遺文・先師先哲の書等を引用し、それを破しているが、その論議の根拠浅く、感情に走り、内容的には得る所少ない。