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愛染明王【教学】

あいぜんみょうおう #2206

愛染明王【教学】

あいぜんみょうおう

梵名はRāgarāja、漢名は囉誐羅闍、「愛欲染着」の義で、この明王は愛欲を司る神。 愛染王ともいう。
真言密教明王部の本尊の一つ。 明王とは大日如来の教令を受けて忿怒身を現じて諸のを降伏する諸尊をいう。 愛染明王の本地は大日如来であり、また金剛薩埵の所変であるともいう。 愛欲の迷いを加持浄化して煩悩即菩提の悟りを得させる力があると信じられ、日本では不動明王と並んで密教信仰の中心に位置している。
出典の本軌は『瑜伽瑜祇経』巻上愛染王品、『金剛王菩薩秘密念誦儀軌』等であり、絶対の大愛欲大貪染をもって、衆生の癡愛染着から起る諸の葛藤波乱を治めるはたらきが書かれている。 その形相は一般に赤色にして三目六臂、忿怒形で弓・箭・鈷・などの法具をもち、息災・降伏・増益・愛敬・鈎召(こうしよう)の義を現す。
種字は吽hūṃで、二重の吽hhūṃを用いる場合もある。
この愛染明王を本尊として息災・愛敬等の祈願を修するのを愛染明王法(愛染法)といい、平安代に盛んであった。 日本では東寺流の密教(東密)で特に尊崇され、天台の密教(台密)では不動信仰が盛んなのと対照的である。 東密から後に男女交合の婬欲を神聖視する立川流などの邪義が生れているが、愛染信仰が歪んでいったものとも考えられる。 また愛染の字が、藍(あい)と染(そめ)とに解されるところから、後世染物者の尊敬するところとなった。
日蓮聖人は建長六年(一二五四)正月一日、生身の愛染明王を感見したことが、『不動・愛染感見記』(定一六頁)に見え、保田妙本寺に所蔵される。 聖人密教研究の成果である『理性院血脈』や『五輪九字秘釈』に列なる密教習学代の産物とも考えられる。 また聖人の顕された十界大曼荼羅の左右の梵字を、古来から右のカン字を不動明王、左のウン字を愛染明王の種字とし、不動が生死即涅槃、愛染が煩悩即菩提を示して、大曼荼羅の法門を顕現していると口伝されてきた(身延山発行『本尊論資料』)。
しかし聖人真蹟遺文からは左右の梵字を不動・愛染とする積極的な文証は出てこない。 『日女御前御返』(定一三七五頁)の「其外不動・愛染は南北の二方に陣を取り」云々の文を根拠として曼荼羅左右の梵字を解釈しているが、この辺から生れた所伝であろう。 逆に『祈祷抄』(定六八二頁)、『神国王御書』(定八八四頁)をみると、不動法、愛染法は亡国の邪法として破折されるので、密教明王部の本尊を開会して、妙法の本尊の守護となし、妙法体中の密教諸尊なる意味を示されたものと思われる。
日蓮聖人遺文における「愛染」の用例は、『法華真言勝劣事』『本尊問答抄』『経王殿御返事』『日女御前御返事』『教行証御書』『祈祷抄』『神国王御書』『上野殿母御前御返』等に見られる。
《『遺文辞典』歴史篇「愛染明王」の項、『日蓮辞典』『岩波仏教辞典』『図説仏教語大辞典』「愛染明王」の項、神奈川県立歴史博物館編『鎌倉の日蓮聖人 中世人の信仰世界』》

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