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八品勝劣

はっぽんしょうれつ #720

八品勝劣

はっぽんしょうれつ

法華宗本門流の祖である慶林坊日隆(一三八五-一四六四)の主張した法門である。
ち法華経二十八品の中で、本門従地涌出品より嘱累品に至る八品を選び取って、他と対比して勝劣を論ずるのである。
日隆が本門正宗分である寿量品の一品二半よりも、流通分の神力品中心の本門八品を取ったのは、神力品における別付嘱の思想に基づくものである。
それは釈尊在世の脱益に対して、滅後末法の下種益を強調するためであり、本門八品下種に着目したことによる。
つまり日隆の八品正意の立場は、末法下種論を確立するためであって、その教義の根幹をなすものが、本門八品所顕上行所伝本因妙下種の題目である。
日隆以前に本寺より分流した円光房日陣の場合、本迹二門の実相の勝劣を立て、五重玄義の体理実相には本迹の不同ありと論じている。
そして日陣は法華経の迹本二門の説相の立場から、已今本迹の勝劣を論じ、寿量品正意、一品二半所顕の本果為体論であった。
これに対する日隆の立場は、日陣の約説已今本迹を捨棄して約時久近本迹を立て、本門八品所顕の本因下種為体論である。
日隆が神力品中心の八品正意を主張した根拠は、日蓮聖人の『観心本尊抄』である。
ち『観心本尊抄』には、四十五字段の次下に「此の本門の肝心南無妙法蓮華経の五字に於ては、猶文殊薬王等にも之を付属したまわず。
何に況や其已下をや。但地涌千界を召して、八品を説て之を付属したまふ」(定七一二頁)と説かれるところである。
つまり本門の肝心たる五字は、涌出品において法華経説法の虚空会上に涌出せられた本化地涌の菩薩に付嘱せられるのであり、その付嘱が神力品において為され、本化の菩薩は本門八品にのみ在座されているのである。
そして、その結要付嘱の要法は滅後末法の下種益である。
この聖人の遺文を依拠として日隆は八品正意、更に本因下種を強調していくのである。
日隆の主張を『私新抄』(『宗全』第八巻)から抽出してみると、まず法華経の教えについて「本迹ハ種子ヲ顕ス法門也」(同二四〇頁)と仏種教法という規定が見られる。
そして正像末の三時においては「滅後ニ約シテ之ヲ論ズレバ、正像ハ熟、末法ハ下種ノ時ナルベシ」(同)と、末法を下種益のと見なすのである。
その下種の根拠となる八品について「一向滅後ノ為ト云方ハ下種ノ題目也。是レハ本門涌出品ヨリ已下八品ナルベシ、此ノ八品ニハ地涌ノ菩薩ヲ召出シテ題目ヲ付嘱シテ末法ノ唱導ト定メ玉ヘリ」(同二九八-九頁)と、八品の上行所伝の題目が下種となるのである。
そして一品二半の体と八品の体の関係は、一品二半の体は絶待妙不二の理であり、八品所顕末法流通の体は相待妙である。
この二妙を相対するに、本門一品二半の絶待の体は権実の無差別と同じであれば、本迹の相対ではなく、八品の本こそ本迹相対の重であるという。
それは「本門ノ意ハ先ヅ絶待妙次ニ相待妙ト次第スル」(同二九九頁)ものであって、在世と滅後に約すれば「正宗ノ絶待妙ノ上ニ三時ノ財物ヲバ出生セリ、是レ相待事相ノ意也。故ニ知ヌ正体ノ本門ハ八品ガ主也。八品トハ正像末ヲ分別シ、正像ヨリモ末法本門ノ正ト定メタリ」(同二九九-三〇〇頁)という結論である。
ここに慶林日隆の八品正意論の根拠を見出すことができるのである。

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