妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

卒塔婆

そとば #965

卒塔婆

そとば

ストゥパを略して塔婆という。
stūpaの音訳。
窣塘婆・窣都婆・藪斗婆・蘇偸婆・素覩婆・種偸簛あるいは兜婆・偸婆・塔婆に作り、また高顕・高勝・墳・廟(意訳)等ともいい、浮図・浮屠・図とも称し、仏陀または仏舎利塔の謂で霊廟とも意訳する。

釈尊が前四八六年(異説あり)二月一五日、中天竺拔提河の辺り沙羅双林で、八〇年の生涯をとじ涅槃に入られ、迦葉、阿難、舎利弗等の弟子達により拘尸那域外、北林で荼毘に付されると、その地のモーリヤ人達は自分達で御舎利を奉安保護しようとした。
マカダのアージャータシャトゥル王は使者を遣して全身の舎利を要求し、また他の王からも同じ要求があった。
この要求を断乎拒否したモーリア人とのにあわや流血の惨を起さんとした時、香姓(トローナ)波羅門が仲裁して等分に分ちなきを得、国王達はその一分を奉持し自国に報恩供養の塔を造顕したのがいわゆる舎利八塔で、香姓波羅門は配分に用いた瓶を与えられ、その中に残った舎利で一塔を建て、モーリヤ族は荼毘の灰を取収して灰塔を建立した。
かくして釈尊の滅後忽ちにして一〇塔が建てられた。
また在世中にも塔が造顕された。
給孤独長者は、釈尊が諸遊行中は給仕奉公ができないから何ぞ身代りの品を頂載致したいと申し出ると、爪と髪を与えられたので、長者は爪塔と髪塔を建立したと『十誦律』五六巻に記されている。
やがて降誕・成道・初転法輪・入涅槃の聖蹟にも塔が建てられ、これを「四處立塔」という。
前二六八年、仏滅後二〇〇年の頃モーリヤ国王阿育王(アシヨカ)(阿怒伽王)はインドの広領域に八万四千の仏舎利塔を建て、諸処の岩壁を削りあるいは要衝に石柱を建て聖文を刻んで民衆に示し、各地に伝道の布教師を派しては教化し仏法興隆に努め、即位一七年には仏典の第三結集(けつじゆう)を行い、世界宗教として発展の基盤を築いた。
舎利塔は遺骨を地下に埋め土饅頭を作ったが、インドは熱帯の地であるので、死者が暑さに苦しむだろうと、墳上に日除けの傘を立てる風習があった。
これが塔初期の形である(図1)。
更に基壇を重ねて高くし(図2)、覆鉢塔と日傘も亦その数を増し(図3)、三時代中に伝って中独自の楼閣建築と結び、幾重かの基壇が重層塔の屋根となり、塔の本体である土饅頭は伏鉢としてその上に祀られ、多数の日傘は一本の竿に整されて「相輪」となったといわれる。
朝鮮を経てわがに伝って瑜祇塔(ゆぎとう)・多宝塔・三重塔・五重塔(図4)あるいは石造の一三重塔(図5)が建造され「窣塔婆」は「塔」と称された。
『法華経』「諸仏滅度已、供養舎利者、起万億種塔、金銀及頗梨、(略)或有起石廟、栴檀及沈水、(乃至)若於曠野中、積土成仏廟、乃至童子戯、聚沙為仏塔。」(方便品)、「若経巻所住之処、皆応起七宝塔(乃至)不須復安舎利、所以者何、此中已有如来全身」(法師品)とある如く経巻は是れ如来法身であると考えられていた。
『釈氏要覧』には「浮図、梵語、此ニ高顕卜云ス、今ハ塔卜称ス。上部ヲ塔ノ形ニシ、五大ニ象リ細長キ板ニ梵字、戒名ヲ記シ墓所ニ立ツルモノ」(図6)とあり、爾来仏塔を象った板塔婆・角塔婆・経木塔婆は祖霊供養に用いられるようになった。日蓮聖人は『革木成仏口決』(定五三三頁)に「其故は我等衆生死する時、塔姿を立て開眼供養するは死の成仏にして草木成仏也」と説き、また、弘安二年(一二七九)一一月三〇日、幼くして世を去った姫御前の十三回忌供養のため、佐渡から、身延の草庵を訪ねた中興信重に託して、故入道の未亡人に送られた『中興入道御消息』には、姫御前の十三回忌追善供養に因んで、未来の成仏を祝福され「去(みまかり)ぬる幼子(おさなご)のむすめ御前(ごぜん)の十三年に、丈六のそとば(窣堵波)をたてて、其面(おもて)に南無妙法蓮華経の七字を顕はしてをはしませば、北風吹けば南海のいろくづ(魚族)、其風にあたりて大海の苦をはなれ、東風きたれば西山の鳥鹿、其風を身にふれて畜生道をまぬかれて都率の内院に生まれん(略)此より後々の御そとばにも法華経の題目を顕はじ給へ」(定一七一人‐九頁)と示されている。
塔婆は祖霊菩提供養又は報恩のために立てるのであり、主に角塔婆・板塔婆・経木塔婆・生木塔婆等があって、角塔婆は御遠忌・開堂入仏或は特殊法要に用い、板塔婆は角塔婆を簡略にしたもので追善のために用い、経木塔婆は水塔婆とも称して川施餓鬼に用い、また二十三回忌あるいは五十回忌のにうれつき塔婆または杉塔婆といって葉のついた生木の塔婆を立てるところもある。
本宗の塔婆供養の特異性は他の宗派に比して、日蓮聖人の法華経中心思想の表現が明確にされているところである。
書式等詳細は『宗定日蓮宗法要式』参照。
遺文辞典』歴史篇「卒兜婆・卒都婆」の項、『日蓮辞典』『広説仏教語大辞典』『岩波仏教辞典』「卒塔婆」の項、『図説仏教語大辞典』「ストゥーパ」「塔婆」の項、『国史大辞典』一〇巻「塔婆」の項、『宗定日蓮宗法要式平成版』、『宗祖真実伝』、『日本絵巻』、『日本仏塔の研究』、『語源散策』》

図版

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