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聖人御難事(三四三)

しょうにんごなんじ #4502

聖人御難事(三四三)

しょうにんごなんじ

一篇。 日蓮聖人著。
弘安二年(一二七九)一〇月一日付の身延から弟子檀那一同に宛てた書状。 五八歳。
真蹟一二紙は中山法華経寺蔵(重要文化財)。
本書は宛名が「人々御中」とあるように、四条金吾を介して法難下にある門下一同を誡め励ました書状である。 題号は四の法難を挙げて聖人法華経の行者であることを明示していることから後人が付したもので「本尊聖教録」(日祐)は「度度御難」と記載している。
本書述作の背景には「熱原法難」が存する。 ち日興・日持らの駿河地方における熱心な法華信仰弘通によって、弘安二年に入り富士下方の熱原の信徒に対する弾圧が表面化し、四月、八月には刃傷、殺害が起り、九月には熱原の神四郎ら二〇余名が召捕られるという大件が起った。 聖人はこの法難勃発を契機として門下一同を激励し誠されたのである。 本書中にも熱原の信徒たちに対して十分に化と勧信を行うよう念告されている。 ち本状は駿河熱原に突発した権力の弾圧件の場が国権所在地鎌倉へ移されたが、鎌倉にあって件に対処する門弟たちへの示書である。
本書の内容は聖人は建長五年四月二八日の立教から弘安二年に至る二七年の間「況滅度後」の経文を色読して伊豆配流・小松原の刃難・佐渡配流等の種々の大難に遭ったが、梵天・帝釈・四天王等の法華経守護の神の加護を受けて今日に及んでいる。 今は鎌倉でも駿河地方でも日蓮門下に対する弾圧は厳しいが、たとえ何人といえども日蓮の一門を害することは出来ないから、獅子王の如き心をもって強盛の信心に住せよと勧められ、法難に対する覚悟を要請されている。
なお日蓮正宗創価学会は、本書をもって大石寺に蔵する弘安二年一〇月一二日付の板曼茶羅本尊を閻浮総与の本尊(戒壇本尊)顕彰の依文とするが、それは牽強付会の暴言である。 ち前述の如く本書は同年一〇月一日付の書状であり、真筆一二紙のどこにも本尊に関する記述は無く、しかも鎌倉在住の門下一同に宛てたもので、末尾には四条金吾の下に留め置くように指示されている。 本書に「二十七年」とあるのは聖人の法華経弘通の開始以来二七年間、その間の大難は門下一同周知の通りであり、今度熱原の者たちは不惜身命の強信をもって弾圧に耐えているが、たゆむ心なく法難に勝ち抜け、と強盛の信を勧められた文である。 直接的にも接的にも偽筆である板曼荼羅を閻浮総与の本尊とする文証とはならない。
《『遺文辞典』歴史篇「聖人御難」の項》

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