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法華草案抄

ほっけそうあんしょう #3885

法華草案抄

ほっけそうあんしょう

一二巻一二冊。
室町代の学匠で身延山第一一世行学院日朝(一四二二-一五〇〇)の法華経述書。
日朝門下である円教院日意が永正四年(一五〇七)に書写した『法華草案抄』が身延文庫に所蔵されているが、五冊欠けている。
本書は江戸代に刊行され『書総目録』では承応年中(一六五二-五四)としている。
本抄書写の意趣について、第一二巻の末に次のような日意の叙述がみられる。
ち日朝在世中の御談として、法華経一部二八品の文々句々にわたる註記がなされた。
それは懇切なものであって、三〇余巻に及ぶものであった。
その演の書(『日蓮宗章疏目録』では「法華演抄」三六巻としている)は大用である。
しかも広きにわたる法談であるために取捨し難い。
そこで、その中でも聞きなれてやさしい箇処を各品よりこれを書き抜いたものが本抄である。
それは下機の聴聞者、また初心の者を勧発するためであると記されている。
このことから本抄は日朝の法華経講談を要約したものであるといえる。
本抄の構成であるが、第一巻に序品方便品、第二巻に譬喩品・信解品、第三巻に薬草喩品・授記品・化城喩品、第四巻に五百弟子受記品・授学無学入記品・法師品、第五巻に見宝塔品、第六巻に提婆達多品・勧持品、第七巻に安楽行品・従地涌出品、第八巻に寿量品、第九巻に分別功徳品・随喜功徳品・法師功徳品、第一〇巻に常不軽菩薩品・如来神力品・嘱累品・薬王菩薩本事品の焼臂まで、第一一巻に薬王品の薬王歎経より妙音菩薩品、第一二巻は観世音菩薩普門品・陀羅尼品・妙荘厳王本事品普賢菩薩勧発品となっている。
さて本書の内容は日朝の講談であり、抜書でもあることから全体に平明である。
法華経を解釈するにあたっては、天台大師の『法華玄義』『法華文句』、妙楽大師の『玄義釈籤』『文句記』が多く引用され、それに比して日蓮聖人遺文は多くない。
また中古天台の口伝書からの引用もみられる。
その中でも寿量品の解釈をみると、釈尊の久遠開顕については事成顕本に対する理顕本を正意とし、十界の無始無終の開顕が正意であると述べている。
あるいは五百塵点劫の解釈では天台宗の学僧、蓮実坊勝範の口伝を引いて塵点劫は迹仏の寿命であって、塵点劫は仮説であるという立場を標榜している。
このような解釈には日蓮聖人の遺文に照らしてみると問題があって、中古天台的色彩がより強い。
しかし、日蓮聖人滅後室町代にあって体系的に法華経の述がなされたことは、注目に値しよう。
なお日朝には法華経解釈書として一〇〇巻を超える『補施集』があるが、同書は引用の要文集の格が強い。
その点からすれば『法華草案抄』は日朝の法華経解釈を知る上で好書といえる。

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