興禅護国論
興禅護国論
こうぜんごこくろん
三巻。
栄西(一一四一-一二一五)著。
建久九年(一一九八=五八歳)作。
本書は日本における最初の禅書で、栄西が再度の入宋から帰国して臨済禅を弘通した時、天台宗を始めとする旧仏教側からの非難に対し、禅宗の独立が仏教と国家のために必要であることを主張した書で、立教開宗の宣言書というべきものである。
本書は十門から成り、第一令法久住門は、持戒と禅定によって仏法を永続せしむべきを説き、第二鎮護国家門は、般若を主とする禅宗こそ国家を鎮護するものであるとし、第三世人決疑門は、本書の中心であって、禅宗に対する世人の疑問非難等二二項目を掲げ、これに答えている。
第四古徳誠証門は、中国「日本における禅法重視と実践の事例を挙げ、第五宗派血脈門は、インド二八祖、中国二四祖から栄西に至る相承の法脈を掲げ、以心伝心の禅が仏法の正統であることを示し、第六典拠増信門は、禅に関する経論の要文を引いて 人々の信心を増長せしめようとし、第七大綱勧参門は、禅の大綱を示して参学実修を勧め、第八禅宗支目門は、禅院の生活、行事の規定を示し、第九大国説話門は、インド・中国における仏法興隆が禅を中心とするものである事例を挙げ、第一〇回向発願門は、禅法般若によって一切衆生に回向し、未来永劫に衆生救済に励むことを発願している。
巻末に栄西の未来に対する予言(未来記)が付されている。
栄西の禅仏教は、鎮護国家を強調し、持戒を基本とする円密禅の三宗一致の禅であったから、鎌倉仏教の中でも旧仏教的要素が残存していると高く評価されなかった。
禅と題目の違いはあるが末法における仏法中興、令法久住を説くことや、その扶桑勝境論やユートピア的国家意識など、日蓮聖人と共通するものもあることに注目しなければならない。
《『正蔵』八〇巻、『中世禅家の思想』(日本思想大系一六)、『大蔵経全解説大事典』「二五四三・興禅護国論」の項、『岩波仏教辞典』『仏書解説大辞典』「興禅護国論」の項》