妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

予言者日蓮

よげんしゃにちれん #379

予言者日蓮

よげんしゃにちれん

島根県津和野生れの劇作演劇学者である中村吉蔵(一八七七-一九四一)の書下ろした戯曲
昭和五年(一九三〇)五月に、戯曲『道元と時頼』、映画劇『道元禅師』『弘法大師伝』と共に収録され、『予言者日蓮』の表題にて近代社より刊行されたもの。
「過去の宗教的偉才が、その時代に対して働きかけた情熱、意志、信仰の強さ、烈しさ、崇高さ」を明示することを意図し、特に日蓮聖人における信仰的情熱を浮き彫りにしながら時の権力や邪法を折伏諫暁する崇高な姿を描写している。
この戯曲は、劇壇の革命児とうたわれ新國劇を創設した沢田正二郎の切なる依頼をうけて執筆されたものであったが、沢田正二郎がまもなく急死したため、その遺志を継いで新劇の中井哲、久松喜世子、畑中蓼玻らによって、昭和四年十一月に本郷座で上演された。
構成は、第一場辻説法、第二場松葉谷庵室、第三場社頭諫言、第四場竜口、第五場土牢、第六場佐渡、第七場殿中問答、第八場身延山、第九場池上入滅、となっている。
衆生済度のために勇猛精進し、その大悲願に生き行動する日蓮聖人を豪放、発刺とした声と姿によって描き、法華経の功徳をひろめ鋭い口調で諫暁し、迫害を恐れずに不死鳥のように釈尊の使いとして生きた精神を語っている。
蒙古襲来については、最終的には蒙古調伏の祈願をこめる描き方をしているが「日蓮とても今の日本の悪王・悪臣が、正法の敵・法華経の賊、真如、実相の障礙であるのを仏天が懲らされる時の正に到来した事を喜ばずにはゐられぬ、この戦ひ勝つとも、負くるとも莫大な費で、民百姓の膏血は搾りに搾り上げられ、その祟(たたり)で、鎌倉殿の天下は必ず覆りませうぞ」とも語り、ここに日蓮聖人の予言を明らかにしている。
更に「このにする為に、一切衆生を仏にする為に、血まみれになって富貴権栄と戦ひつづけた、この久遠の戦ひと大悲願は生き変り死変り今日も明日もつづけられて行かねばならぬぞ」と、日蓮聖人の遺言を記し、遺文を土台にしながら現代口語に脚色した語りによって、日蓮聖人の永遠なる慈悲と法戦に立ち向う崇高なる信仰的意志を迫真的に打出している。

リンク

← 事典トップ