佐渡の日蓮
佐渡の日蓮
さどのにちれん
武者小路実篤の書いた戯曲。
昭和三年(一九二八)九月『改造』に発表。
『名作歴史文学・日蓮』(昭和一八年一二月発行・聖紀書房)に所収される。
構成は第一幕の第一場佐渡塚原の堂。
第二場阿仏房の室。
第二幕の第一場密謀。
第二場塚原の堂。
第三場茶屋の一室。
第三幕の第一場幕の前。
第二場塚原の堂。
第四幕の第一場印性房の室。
第二場日蓮の室、月夜。
第五幕の第一場鎌倉。
第二場印性房の室。
第三場日蓮の室となっている。
この脚本は、戯曲『日蓮』の後編として書かれたもの。
作者自ら『日蓮』に比べて『佐渡の日蓮』の方は無理が少ないと述べている。
佐渡塚原の堂に身をおく日蓮聖人の信仰的なたくましさと人間味あふれる姿を描き出している。
日蓮聖人は寒さや餓えと闘っている。
日本の柱、日本の魂ではないか、あらゆる苦しみを耐えてきた、これしきの寒さにくたばってたまるかと自問自答する。
そして「日蓮の身体にはあたゝかい血が通ってゐる。
凍った水を解かす力はあるぞ」と叫び、法華経のために生きてゆくぞ、と法華経の行者として生きぬく覚悟を語る。
日蓮聖人を殺しにきた阿仏房は、亡びようとする日本の運命を心配して身を投げだしている日蓮聖人の姿にふれて優しい方だと思い、釈迦牟尼仏のみ心に従わなければいけないという日蓮聖人の教えに心を傾ける。
阿仏房・千日尼夫婦は、日蓮聖人の偉大さを語り合う。
「本当に心の美しい、温かい方だ」。
心の純な、力強い感じのする人であり、「山のやうな岩のやうな、しっかりした、何ものにも驚かない人、死んでも死なない人、負けても負けない人、誰に向ってもたぢろがない人」と述べる。
夫婦は念仏を捨てて法華経の題目を唱え、弟子になり供養をささげる。
更に最蓮房も本当の宗教家らしい方に会ったと喜び、日蓮聖人に信伏する。
他方、念仏者らは「日蓮を殺せ」と絶叫し密謀をめぐらすが、問答を行って敗北してしまう。
日蓮聖人は念仏者らに対しては毅然として法華経信仰を説き示し、月天子に向っては「どうか日蓮の弟子達をお守り下さい」と祈る。
鎌倉から訪れてきた女人・日妙には、罪深いものでも必ず救われると自らの生命をかけて語りかける。
やがて「日本国中に南無妙法蓮華経をひろめ、日本国中を佛の国にするには最後の戦ひが必要だ」との決心をかためて鎌倉へ帰っていく。
ここには真理の実践者であると同時に、死んで死なざる精神の勝利者であった日蓮聖人のありようが明らかにされている。
死を恐れず、死ぬまでたくましく生きぬいていく日本の魂としての日蓮聖人の風姿が、作者特有の平明な文体で綴られ、日蓮聖人の心を身近に親しみ深く活写している。