武者小路実篤
武者小路実篤
むしゃのこうじさねあつ
(一八八五-一九六七) 小説家・劇作家・詩人。
志賀直哉らと『白樺』を創刊『お目出たき人』『世間知らず』を書き人道的で現実肯定の白樺派文学を代表する作家となった。
大正七年(一九一八)に「新しき村」建設運動に着手すると共に小説『幸福者』戯曲『人間万歳』を発表し評論も執筆した。
昭和期には『トルストイ』『二宮尊徳』等の伝記小説に取組み、戦後は小説『真理先生』を同人誌『心』に発表した。
美術・絵画等にも傾注した。
聖者や芸術家に理想的人間像を求めて尊敬を払い、真理を愛し自然と人類の意志との調和を重んじた。
この作風から『釈迦』『耶蘇』等の宗教物を書いた。
小説『日蓮と千日尼』。
戯曲『日蓮』『佐渡の日蓮』を宗教的伝記および脚本として執筆・これらの作品は昭和初期に依頼されて書いたもので、昭和五年(一九三〇)に書き上げた戯曲『日蓮』は同年五月一日より明治座にて上演された。
真理を説き実践した噴火山のような男として人間日蓮を描いた点を特徴としている。
「日蓮は自己がはっきりしすぎている」ので信者にも弟子にもなれないと述べつつも自己を鍛えつついじけることなく死ぬまで法華経の真理のために生きぬいた「人物の強さ」と「勇気や決心や信仰の強さや、どんな迫害にも負けない忍耐力」に尊敬をはらったところに実篤の日蓮聖人観が存在する。
また南無妙法蓮華経を「宇宙と仏性の調和」とみなし、そこに日蓮聖人における強い信念と力の源泉を見出している。
とりわけ、日蓮聖人の心の優しさ、温かみ、純粋さをも見つめ、それを率直・平明で現代的な言葉遣いによって表現し、親近感のある人間日蓮のおもかげを浮き彫りにしている。
《石川康明『日蓮と近代文学者たち』、『国史大辞典』一三巻「武者小路実篤」の項》