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両巻血脈

りょうがんけちみゃく #309

両巻血脈

りょうがんけちみゃく

富士門流に伝承されている二種の秘伝書で、日蓮聖人に仮して著されたもの。
ち『本因妙抄』(つぶさには『法華本門宗血脈相承事』)と『百六箇相承』(つぶさには『具騰本種正法実義本迹勝劣正伝』)のことで、両者はともに『宗全』二巻に収録されている。
その内容を概観すると『本因妙抄』は、伝教の著述と伝えられる『三大部七面授口決』に基づいて書かれたもので、種本脱迹の勝劣判に立脚している。
その立場から本門・迹門の一往勝劣、再往一致の教えは邪義であり、更に、釈尊在世の法華経は脱益にして、本門・迹門ともに迹、久遠の法華経は下種であって本であると主張する。
そして末法に本化の菩薩が弘通する法華経は、在世脱益ではなく久遠下種の法華経であると見なすことによって、釈尊在世の法華経末法の法華経とに勝劣を立てることになる。
よって日蓮聖人の弘通せられる法華経は釈尊の説かれた法華経よりも勝れたものとなり、更には脱益の法華を説かれた釈尊を脱益近成の迹仏と規定し、末法下種の法華を弘通せる日蓮聖人を久遠本因妙下種本仏と立て、釈尊を卑下するのである。
次に『百六箇相承』は『本因妙抄』の種勝脱劣の思想を継承し、勝劣を一〇六ヵ条にわたって註したものである。
この両書は共に日蓮聖人滅後、富士派の立場から日昭・日朗らの流れを汲む関東派の本迹一致説に対して種本脱迹の勝劣を掲げ、釈尊本仏・釈尊本尊に対しては釈尊脱仏・日蓮本仏説を力説し、戒壇論に至っては、理壇に対し富士戒壇説という事壇を主張したものである。
なお両書の成立についてみると『本因妙抄』奥書には弘安五年一〇月十一日に日蓮聖人自ら記されたとあり、『百六箇相承』は弘安三年(一二八〇)正月十一日、日蓮聖人より日興へ授与されたと記されている。
しかし両書の根拠となったものは中古天台・口伝法門の『三大部七面授口決』に依ったもので、日蓮聖人の書と見なすことはもちろん、日興の著述と見ることにも問題がある。
本書が確実な文献に表れたのは、康暦二年(一三八〇)に妙蓮寺日眼の著した『五人所破抄見聞』が初めてであるが、それも『本因妙抄』の中の一文が引用されているにすぎないのである。
このことから両書は歴史的に見て、富士門流の秘伝書であって、日蓮聖人の信仰的世界が正しく述べられたものと見ることはできない。

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