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清澄に帰れる日蓮

きよすみにかえれるにちれん #3994

清澄に帰れる日蓮

きよすみにかえれるにちれん

中里介山の書いた伝記小説
大正一〇年(一九二一)に執筆、翌年に大菩薩峠刊行会の手で春秋社より刊行された。
青年蓮長が修学に励み、法華経に魂を打込み、著作に情熱を燃やして、遂に末法の世に法華経弘通の大任を負うのは我れ一人であるとの自覚に到達し立開宣するまでの姿を書いたもの。
文体は全体として生硬で旧来の伝記の域を出るものではないが、旅愁にまけることなく、法然を批判しつつ孤燈の下で修学に励んでいく様子を鮮やかにうつしだしている。
特に法然の反動児こそ蓮長だ、という観点から法然との対決を通して成長していく蓮長の心を捉え「四海のうちが、皆一法然房の魔力の情勢で西へ西へとなだれ落ちて行く時に自分一人が東へ行くのだ」と記し東的で野的な青年日蓮の意志を示している。
また日蓮聖人の剛烈な精神が法華経を広めていく不惜身命の精神から導き出されたとし「蓮長の広長舌は火と剣の如き熱と鋭とを加へて行く」と立開宣の模様を書いた。
更に本書は、冒頭に「今〈清澄に帰れる日蓮〉を校し了って、わが東夷出身の先輩蓮長さまの霊に申上げます。 どうぞ私共を一切衆生の為に泣ける人にして下さいまし」と記述したように、同じ東国生れという共感に基づいて上求菩提・下化衆生誓願をこめて綴った点を特徴としている。
この強烈な誓願を本書では「蓮長が渾身の血といふ血は潮の如く鳴り出した。 肉といふ肉は竜蛇の如くに躍動した。 その口から迸り出づる題目の声は当にこれ地を貫く獅子吼である。 大日輪は遺憾なく東海の上に現れた。 千波万波、悉くそれに朝して、海潮の音はち梵音である」と述べられていく。
この立開宣の朝における決意を基軸にしつつ、やがて立開宣後に父母を化し業苦と罪の充満する鎌倉に行く道を述べ、獅子吼する日蓮聖人の精神の躍動を語っている。

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