二十行の偈
二十行の偈
にじゅうぎょうのげ
法華経勧持品の「唯願わくは慮(うらおもい)したもうべからず」から「仏自ら我が心を知ろしめせ」までの偈文をいう。
薬王菩薩をはじめとする八十万億那由他の菩薩が、仏滅後の悪世における値難忍受による法華経弘通を誓った文である。釈尊は、法華経見宝塔品の「付嘱有在」「令法久住」「六難九易」(三箇の勅宣)、提婆達多品の悪人成仏・女人成仏(二箇の諫暁)を説いて功徳の大きさを明示し、如来滅後の弘教を勧勅された。これを受けて、勧持品で、説法の会座の菩薩が如来滅後の弘教を誓う文である、と日蓮聖人は解釈されている。〈『日蓮聖人遺文辞典 教学篇』p.926〉
日蓮聖人はこの偈文を仏の未来記といい(『開目抄』定五五九頁)、自己の法華経弘通と値難忍受の宗教活動の支えとし、滅後の大難を説く偈文のすべてを体験したことによって、自らが法華経の行者であることの証しとした。
即ち、第一四偈の「我不愛身命但惜無上道」は聖人の弘経の決意と受難の覚悟を決定した文であり、題目弘通とそれに伴う迫害弾圧、松葉谷法難・伊豆流罪・東条法難・竜口法難・佐渡流罪によって、「悪口罵詈」「及加刀杖者」「数数見擯出」等の未曽有の大難を説く偈文を色読体現した聖人は、天台・伝教に超勝し、法華経に予言された末法の正導師、本化地涌上行の自覚に住した(『開目抄』定五六〇頁)。
また妙楽大師が『法華文句記』巻八に指摘した、俗衆増上慢(第二偈の「有諸無智人」)・道門増上慢(第三偈の「悪世中比丘」)・僣聖増上慢(第四偈の「或有阿練若」以下の七行)の三種の人びとを「三類の怨敵」(→さんるいのおんてき)と呼び、法華経弘通を妨げる者とし、具体的に当時の人々を配当している(『開目抄』定五九三頁以下)。
この二十行の偈は、宝塔品の「六難九易」の文と共に、聖人の一期の大事たる「色読法華」の依文であり、聖人の宗教活動を支え、忍難弘経の意欲を奮い立たせた文である。
《『遺文辞典』教学篇「二十行の偈」の項、『日蓮辞典』「二十行の偈」の項》