此他六瑞
此他六瑞
したろくずい
詳しくは此土の六瑞、他土の六瑞という。
此土とは娑婆国土、他土とは東方一万八千の国土、六瑞とは六種の瑞相をいう。
法華経序品に説かれ、釈尊が法華経を説かんとするに当って此土・他土に各々六瑞を現じたことをいう。
天台大師の『法華文句記』によると、此土の六瑞とは説法瑞、入定瑞・雨華瑞・地動瑞・衆喜瑞・放光瑞をいう。
説法瑞とは法華経の前に『無量義経』を説いたこと。
入定瑞とは先の経を説いたのち、無量義処三昧という禅定に入ったこと。
雨華瑞とは天から曼陀羅華(まんだらけ)曼殊沙華(まんじゆしやげ)の大小の花が釈尊及び大衆の上に降りそそいだこと。
地動瑞とは仏の世界が上下・左右など六種に震動したこと。
衆喜瑞とは会座の人々がこの奇瑞をみて不思議の感にうたれ、歓喜し一心に釈尊を見奉ったこと。
最後に放光瑞とは釈尊が眉の間にある白毫相(びやくごうそう)から光を放って、東方一万八千の国土をあまねく照し、下は阿鼻地獄(あびじごく)から上は阿迦尼咤天(あかにだてん)に至るまでの六道の人々を映し出したことをいう。
此土の六瑞では放光瑞が最も重要で、他の五瑞は補助的な意味でしかない。
白毫相から放たれた光とは仏の智慧をいい、仏の智慧を説いた法華経によって六道の人々が救済されていくことを暗示する。
他土の六瑞はその救済される経過を示したもので、見六趣瑞、見諸仏瑞、聞諸仏説法瑞、見四衆得道瑞、見菩薩所行瑞、見諸仏涅槃瑞をいう。
序品ではこの此他六瑞のあと、このような瑞相を見て疑問を抱いた弥勒菩薩の問いに対して、文殊師利菩薩が法華経が説かれる時には必ずこうした不可思議な瑞相が現れると答え、共にこれからの法華経の説法を聴聞しようという。
日蓮聖人は正嘉以来打続く天変地異をこの瑞相にあて、末法の初めに法華経が広宣流布し、法華経の行者が出現する先兆と見られた。
《『遺文辞典』教学篇「此土他土六瑞(しどたどろくずい)」の項》