宗教法人
宗教法人
しゅうきょうほうじん
宗教法人とは財産法その他の法律により権利能力の主体であることを認められ法律上の人格をあたえられた宗教団体をいう。
わが国における宗教法規は明治一七年(一八八四)八月二日の太政官布達第一九号に始まりその後、昭和一四年(一九三九)四月八日法律第七七号をもって公布され翌一五年四月一日はじめて宗教団体に対する宗教法規「宗教団体法」が施行され順次宗教法人令、宗教法人法と制度改変の宗教関係法律を経過し現在に至ったものである。
この宗教法人という法人名は宗教法人令施行より用いられた名称である。
即ち宗教法人令による宗教法人と宗教法人法による宗教法人の二種であり、その宗教法人のうち単立法人、被包括法人、包括法人と三種に分類されている。
宗教法人に包括されない宗教法人、即ちいずれの宗派、教派、教団にも属しない寺院、神社、教会等の宗教法人が単立法人である。
宗派、教派、教団等に属している宗教法人が被包括法人である。
宗教団体を包括している宗教法人が包括法人である。
これら宗教法人の起点である宗教団体法とは、大正一五年(一九二六)五月一三日設置された宗教制度調査会が従来の関係法令、法規を検討し各国の宗教制度をはじめわが国の宗教の沿革、歴史、伝統、慣例、慣行等を調査研究して制定の運びに至った宗教法規である。
その骨子は、(一)明治以来発布された宗教関係法規を現行法規に整理統合し宗教行政の円滑を期するため、(二)宗教法令の確立を図り適正な宗教行政の運営に資するため、(三)宗教団体に対する保護助成の措置を拡大し、公共の福祉を害し公安をそこなう恐れのある宗教団体の抑制に努める強化制度のため、これらの三要素の立法をうけて従来の仏教宗派は宗教団体法による宗教団体とみなされ文部大臣の認可をうけたのである。
この法律施行の新法によって宗派となった団体はそれぞれの宗教団体の宗制を作成し文部大臣の認可をうける義務づけをされた。
この新法に基づいて同一六年三月二九日文部省告示第四四九号「官報四月七日」により日蓮宗(法人)設立認可。
このとき日蓮宗、本門宗、顕本法華宗の三宗合同して日蓮宗を設立したのである。
この宗教団体法は昭和二〇年八月一五日ポツダム宣言受諾と共に廃止され、これに代って「宗教法人令」が公布された。
この法律は同二〇年一二月二八日勅令第七一九号をもって公布、即日施行されたのである。
これを「ポツダム勅令」といい政治的、社会的および宗教的自由に対する制限除去の基本原則に従って一八ヵ条の条文に規制された宗教法人制度である。
その骨子は宗教団体の財産保全と共に宗教法人の設立について認可制から届出制に切り換え登記主義に組み換えられ宗教法人の規則、変更、解散等は制限なく自由に取り運び得るように制度化されたものである。
この自由法令の施行に伴い分裂、分派、独立等の宗教法人乱立の傾向と宗教団体本来の目的を曲解して宗教の尊厳を穢し、宗教法人として社会の信頼に悪影響を及ぼす結果を招来した。
この現状の中で同二六年四月三日法律第一二六号をもって「宗教法人法」が公布され「宗教法人令」は廃止された。
この法律は本則八章補則罰則各一章八九ヵ条附則二八項からできている。
その骨子は政教分離と信教の自由の二大原則を基本として(一)認証制度、(二)責任役員制度、(三)公告制度、の三本柱を中心とする制度である。
(一)認証制度とは宗教法人の規則の作成、規則の変更、合併等についてその文書の成立、内容の正しさの公的証明制度をいう。
(二)責任役員制度とは宗教法人の事務を決定する機関であり宗教法人の規則およびその法人の財産管理、業務、行為、活動、礼拝施設の保全(墓地をふくむ)等についてそれぞれ議決決定する構成員の制度をいう。
(三)公告制度とは宗教法人の不動産の処分等の重要な行為、被包括関係の設定、廃止および合併、解散等の重大な行為について宗教法人に不利益なきよう信者その他の利害関係人に周知させる制度をいう。
これらの制度を法律で定めることにより宗教団体の歴史、沿革、伝統を遵守しその宗教活動を展開させ社会福祉の増進に寄与させようとするものである。
この制度のうち宗教団体相互間の問題は「包括法人」と「被包括法人」の関係であって共通の教義、経典のもとにこれと一体的な宗教活動を行う単位団体すなわち寺院、教会の宗教法人を包括する組織団体を「包括法人」といい、共通の教義、経典のもとに組織団体の運営および活動推進のために包括される寺院、教会を「被包括法人」という。
《『宗教関係法令集』、近藤春文編『宗教法人の理論と実務』》