金綱集
金綱集
きんこうしゅう
佐渡阿闍梨日向が日蓮聖人より聴聞したところに基づいて諸宗の大綱を記述した著書。
全一〇巻より成り『宗全』一三-四巻に収載されている。
日向が自らの見聞するところによって、その宗の著書から引用し、天台関係の書物からも引用して諸宗破立の素材を列記しているから、日蓮聖人直弟の著作としては最も大部のものである。
日蓮聖人が晩年、身延でどのような講述をなしたかについて考察すると、最も確実にいえることは『一代五時図』または『一代五時鶏図』を図示しておられるところから、そうした仏教大綱の講述に基づいて諸宗に批判を加え、法華経の教義を説いたことであろうことである。
『昭和定本』第三巻の図録篇には、少なくとも『一代五時図』関係の真蹟が六点現存している。
そこで今『一代五時図』と『金綱集』の内容を対照して見ると下記の図版のようになる。
このように『金綱集』著作の縁由は、日蓮聖人の『一代五時図』に基づく釈尊御一代の教説の位置づけと、各経典を依経とする各宗の位置づけを継承することにあるが、更にそれを綿密にし、各宗の特徴を明らかにすることに大きな目的があったと推定される。
即ち『一代五時図』が華厳・阿含・方等・般若・法華涅槃の五時大判を中心として、それに対する各宗の配当を図示するのに対し、『金綱集』は各宗を柱として、その宗の依経・依論・祖師ならびに三国にわたる伝来についてある程度くわしく述べた後、その宗の特徴的な教義を紹介しているのである。
今日の常識からすれば、それぞれの宗についての批判が鋭く語られなければならないとするのが普通であろうが、本書においてはむしろ各宗の主張の紹介に重点が置かれているといえよう。
それは諸宗対破の素材として本書が編まれたためであろう。
なお日蓮聖人滅後、上代に本書と基盤を共通にする書物が数点ある。
中山法華経寺三世、浄行日祐『問答肝要抄』(『宗全』一巻)には「法相宗帖」「三論宗帖」「雑帖」を収め、中老日法の『日蓮聖人法門聴聞分集』(『宗全』一巻)は身延での日蓮聖人の『一代五時図』の講述を筆受されたものと推定される。
《『遺文辞典』歴史篇「金綱集」の項、『日蓮辞典』「金綱集」の項》
図版