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日蓮聖人註画讃

にちれんしょうにんちゅうがさん #3013

日蓮聖人註画讃

にちれんしょうにんちゅうがさん

五巻。 円明院日澄(一四四一-一五一〇)著。 成立年代未詳。 『註画讃』とも略称する。 『日蓮上人伝記集』『続群』九巻所収。
室町期成立の代表的な日蓮聖人伝記本。 原本は存在しないが、日澄没後二六年目の文五年(一五三六)に、勧発師安立院日政、画工洛陽絵師窪田統泰によって製作されたものが、京都本圀寺に現存する。 この本圀寺本は漢文体、極彩色のもので、原本に最も近いと考えられる。 他に近世初頭に本圀寺本を筆写したと思われる岡山妙覚寺本、本圀寺本を模写したと思われる静岡実成寺本、千葉鏡忍寺本、池上本門寺本、雑司谷本納寺本がある。
期に成立した行学日朝の『元祖化導記』と共に、聖人滅後に成立した最初の一代記的体裁を備えた伝記本である。
本書は五巻三二項目に、日蓮聖人の生涯を絵と漢文の絵詞で書きあらわした絵巻物で、聖人伝記における最初の絵詞伝でもある。
著者日澄の本書述作の目的は、日蓮聖人伝の巷間流布にあったが、著者が聖人を超人的な覚者として捉えることを基調としたため、そこに画かれた聖人伝記宗教的奇蹟の面から多く語られ、かつ読者の興味をひくような潤色記述を豊富に盛込んで述作されている。 同期に成立した日朝の『元祖化導記』の記述方法が、日蓮聖人遺文の自伝的部分を抽出編集し、それを基本に遺文にない部分は『王代記』『太平記』等の諸本によって補うのとまさに正反対である。 従って『元祖化導記』が、潤色的部分は少ないが、逆に読者の期待する読物的要素の稀薄から、一般への流布は極めて低かったのに対し、『日蓮聖人註画讃』は、一般諸人の興味と関心を起させる内容を豊富に盛込んだ読者本位の伝記本として登場したといえよう。 実、近世初期、書籍の主流が写本から刊本に変るが、日蓮宗最初の出版書として慶長六年(一六〇一)に刊行されたのが『日蓮聖人註画讃』(漢文)であった。
但し本書は多くの写本を集めて校検した混合本文であり、刊行の点で作成された第二次成立本ともいうべき格をもつ。 近世の刊本は、この慶長六年本を祖型としたため、諸刊本ことごとく右の格を有する。 以後、本書は近世初期の一六〇〇年代(江戸代前期)だけでも、漢文体・和文体の諸版が一〇余点も刊行された。 更に近世中期以降になると本書の亜流、または本書を種本にした多種多様の日蓮聖人伝が作製、刊行され、その購読者をして日蓮聖人の生涯や聖人像の構築に極めて大きな役割を果した。
《新倉之「日蓮伝小考」『立正大学文学部論叢』一〇号、冠賢一「日蓮聖人註画讃の一考察」『法華経信仰の諸形態』、同『日蓮聖人註画讃』(『近世文学資料類聚-仮名草子編』一五)》

【補記】
本圀寺本『註画讃』巻子本五巻は複製本が公刊されているなど多くの紹介本がある。
平成二六年四月、『図説日蓮聖人と法華の至宝』の第七巻として「日蓮聖人註画讃」が発行された(同朋社メディアプラン)。 本圀寺本はじめ伝来する諸本(九本)を一冊に集成し紹介と解説を付したものである。
また、これより前、諸本中の一本「鏡忍寺本」が平成二五年一一月に日蓮新聞社から発行された。 詞書全文の原文・訓読その現代語訳が収められている。

《『日蓮辞典』「日蓮聖人註画讃」の項》

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