岡本かの子
岡本かの子
おかもとかのこ
(一八八九-一九三九)
歌人・小説家。
漫画家岡本一平(一八八六-一九四八)の妻で、昭和を代表する前衛芸術家岡本太郎(一九一一-一九九六)の母。
『明星』『スバル』に歌を発表して歌人となり、明治四四年(一九一一)に平塚らいてうに招かれて「青鞜」に加わり、同年に処女歌集『かろきねたみ』を出版した。
昭和期には小説家として活動し、『鶴は病みき』『春』などでユニークな文才を認められ、『金魚撩乱』『老妓抄』『河明り』『生々流転』などの作品を執筆した。
この間に仏教への関心を深め、仏教の解説や経典研究についての著述にも励んだ。
『鯉魚』『愚人とその妻』『鬼子母の愛』、戯曲『阿難と呪術師の娘』など仏教文学の作品や、『観音経を語る』など仏典解説書がある。
また『禅の生活』短歌欄の選者となり、自らも仏教歌を作詞した。
昭和三年(一九二八)『読売新聞』に『散華抄』を連載し、論文、歌、訳偈、一色一香集(随想)、評論を発表して仏教研究による生命の浄化を呼びかけた。
釈迦、観音への鑽仰と法然、親鸞への傾倒を仏教信仰の基軸にしていたが、特定の宗派性はなかった。
『散華抄』の「感想後篇」に「刀杖瓦石の難」と題する日蓮聖人についてふれた短文を収めている。
ここでは迫害・中傷を逆化の因縁とし、受難者は罪業を滅し、迫害者をまことに導いていく生命浄化に励んだ日蓮聖人の法華経観とまことの戦いにふれつつ聖者の遺訓に随喜した心を綴っている。
昭和一四年(一九三九)没。多磨墓地に葬られた。
《『国史大辞典』二巻「岡本かの子(カノ)」の項》