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日蓮論(木下尚江著)

にちれんろん #3027

日蓮論 (木下尚江著)

にちれんろん

木下尚江(きのしたなおえ)(一八六九-一九三七)の書いた評論
明治四三年(一九一〇)一一月発行。東京・文英堂刊。
木下尚江は社会運動家。キリスト教社会主義の立場から普通選拳運動、廃娼運動、足尾鉱毒問題に取組み「平民新聞」創刊に参画、小説『火の』等を執筆した。
その後、厭世、孤独の念を抱き教研究に入り法然・親鸞と共に日蓮聖人の文章にも出会い、この「奇代の俊傑」の容貌の一面を書き現そうとした。
この評論の骨格は、宗教革命者としての日蓮聖人における本来の分が十分自在に発揮されずに終り「一個の偉大なる未製品」であったと主張する点にある。
この立場から身延入山の動機については、名聞をたちきれなかったことの非を悟った一大懺悔と考え、伊香保山に退隠して小説懺悔』を書いた自身の境遇に応じて解しようと試みている。
この書では偏狭な愛者であるとされてきた日蓮観をただそうとする意図がみられるが、本来は非凡な革命家なのに天台宗など亡びゆく旧仏教の側に立ち法然らの改革の英雄を迫害し宗教改革を圧迫「革命軍の殿将が却て先鋒隊に発砲する」混乱を演出したと極論した。
また「日蓮と女」の一項を設け、母の死を契機に宗教を第一義とした自分の身にひきつけ、日蓮聖人が女性に注いだやさしい心情を宗教改革者の本分を現すものと述べ、親思いの一を最も大切なことであると記している。
日蓮聖人の「勇猛の精神に随喜」しながらも同に「使命の遂に芽をして枯れたことを悲む」とも語り、滑稽な悲劇を演じたと評した。
《高木豊「木下尚江の『日蓮論』」『大崎学報』一○六号》

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