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巨水遠沾記

こすいおんでんき #1932

巨水遠沾記

こすいおんでんき

身延山三世遠沾院日亨(一六四六-一七二一)の著した学書で二巻よりなる。
和三年(一六八三)、三八歳のとき刊行されている。
本書は五義教行証即身成仏等について一五条を立てて論じたものである。 その主旨は末法における即身成仏の巨益は、法華経の題目によることを主張し、この法華経のみが末法の生気のなくなった衆生を沾(うるお)す巨水であることを明らかにしている。
まずその内容を一瞥すると、当家の学者は五義を知るべきであることを説き、ついで、教行証の次第を述べるに当っては、在世結縁は迂回の機であるが、末法は本門の直機であって、時と機とともに正法・像法代に勝れている。 それ故に教行証は本門の直機について論ずべきで、教とは法華経一部にわたるのではなく、ただ題目の五字に限り、行はただ口唱の一行に限り、証は但聞不解の名字即よりただちに妙覚の仏果を証するというのである。 そして、即身成仏名字即成を主張するのであって、末法の機は観行即にも及ばない名字即であるために、妙覚を得ることが出来ないという説に反対している。
この立場より即身成仏霊山往詣の関係については、その一体を説いて成を正覚と見なしている。
更に修行論においては従来、観心悟道と唱題成仏の二種類を立てる説があるのに対し、当家においてはただ唱題成仏の一行のみであると従来の説に批判を加えている。
このことから窺えることは日亨は日重学に修正を加えた点が多く見られ、宗学思想に覚醒をうながしたと評することができる。

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