荼枳尼天
荼枳尼天
だきにてん
荼吉尼、空行母の義で拏吉寧、拏吉尼、荼耆尼、陀祇尼に作る。
胎蔵界曼荼羅外金剛部院南方閻魔天の左側(下方)に安ぜられる三天鬼及び一偃鬼(いちえんき)の総称である。
『大日経疏』第一〇によれば、この天は夜叉の類で、六ヵ月以前に人の命終せんことを知り、その人の死を待って心を食すという。
縁あって摩訶迦羅大黒天に教化され、その所属の夜叉となる。
荼枳尼法を修する者には神通力を得せしむという、外道邪法の一つといわれる。
わが国では中古以来この天を稲荷の神体となし、『古今著聞集』第六には咤祇尼の法を行ったとあり、伴信友の『験の杉』には別名を福天神と称したり、白晨狐王大菩薩、または白狐と書いてタウカといったとある。
『類聚名物考』第三三〇には「伊豆那法は天竺の荼耆尼天の法なり。いづなとは信濃国の山の名なり」とあって、現に三河国の豊川稲荷には荼吉尼天が祀られているという。
なおこの荼吉尼には二類あって、人の心を噉食するものと、心垢を除去噉尽するもの、即ち如来の応迹なりとするものとの説もある。
後世印度で瑜伽派の左道派密教者達に崇拝され、五麼字の瑜伽行と称し、肉食、魚食、飲酒、印を結び、交接をもって大楽を得るとの教えが西蔵に伝わり、この鬼神を智荼吉尼として崇拝する秘密儀軌がある。
《『広説仏教語大辞典』「荼枳尼」の項、『岩波仏教辞典』『国史大辞典』九巻「荼枳尼天」の項、『図説仏教語大辞典』「ダーキニー」の項》