十羅刹女【教学】
十羅刹女【教学】
じゅうらせつにょ
法華経の中で護法の善神となった一〇人の羅刹(悪鬼)女のこと。
法華経陀羅尼品第二十六に、藍婆(らんば)・毘藍婆(びらんば)・曲歯(こくし)・華歯(けし)・黒歯(こくし)・多髪(たほつ)・無厭足(むえんぞく)・持瓔珞(じようらく)・皐諦(こうたい)・奪一切衆生精気(だついつさいしゆじようしようけ)の一〇人の羅刹女が仏前において、鬼子母神と共に陀羅尼神呪を唱えて「我等また法華経を読誦し受持せん者を擁護して、その衰患を除かんと欲す」と、法華経受持者の守護を誓約している。
十羅刹は更に「説法者を悩乱せば、頭破れて七分に作(な)ること、阿梨樹の枝の如くならん」と法華経の行者を悩ます者に罰を下すことも誓言している。
日蓮聖人の十羅刹女信仰はこの経文から起った。
聖人の遺文には十羅刹が法華経の行者を守護すると述べたところが二一ヶ所(定五八一頁等)、行者に対してこの上なく悦ぶというのが七ヶ所(定一一四二頁等)、行者の信念を試みるというのが七ヶ所(定九二五頁等)、行者が守護を要請するというのが六ヶ所(定七九〇頁等)、その他迫害者を罰する(定一二三九頁等)、身替りとなって助ける(定一五九一頁等)、行者の違約を罰する(定四二四頁等)、十女の身分を明かす(定三三六頁)等、数多く記述されている。
聖人の法華信仰と伝道弘通の体験の中から必然的に法華経の守護神としての十羅刹女に対する信仰が深まっていったのであろう。
聖人以後の日蓮教団ではこの十羅刹女信仰は十女の母とされる鬼子母神への信仰に集約されていった。
《宮崎英修『日蓮宗の守護神』、『遺文辞典』歴史篇「十羅刹女」の項、『日蓮辞典』「十羅刹女」の項、『岩波仏教辞典』「羅刹」の項》