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髯題目

ひげだいもく #5296

髯題目

ひげだいもく

泉鏡花(一八七三-一九三九)の書いた小説
鏡花は近代文学史上の代表的作
唯美的で浪漫的な作風により夢幻の世界を描いた。
摩耶夫人像を拝して亡母を追慕することによって、女のうちに美と聖なるものを求めた。
『高野聖』など文学に値する作品がある。
髯題目』は、明治三○年(一八九七)一二月、二四歳の時に書き『文芸倶楽部』に発表、高山樗牛の絶賛をうけた小説
念仏宗旨とする粂屋に嫁いだ小燕は、かつて女役者・早乙女縫之助の娘分であった。
縫之助大夫は死んだには経帷子も着せてもらえないと覚悟して、背中に南無妙法蓮華経と髯題目を墨で入れて体がそのまま経帷子さと言いつづけていた。
これにならって小燕も背中に「一四海」「皆帰妙法」の八文字を入墨していた。
三明という粂屋における念仏講の際数珠が紛失したため姑の命で着物を脱がされると、この真赤な八文字が鮮やかにこぼれ出た。
この小燕は縫之助大夫に粂屋から「立派に葬式を出しておもらい」と叱るように言われて縁づいて三年、縫之助が死んで芸人仲間の巴波川灘(うずまがわなだ)丸の手で紅蓮寺(こうれんじ)の池端の土中に寂しく埋められたのを聞きを飛び出して一緒に死のうとする。
老芸人三太郎らの介抱をうけた小燕は辛棒して粂屋から立派な葬式を出すのが亡き大夫の志だと思い、やがて毒を飲んで死ぬ。
そして粂屋の身代の半分をかけた小燕の葬式が営まれる。
嗜虐的なものに美を求める鏡花の主情が投影されているが、落ちぶれたりとはいえ人らしい心を失わない芸人の気持や母とも思う大夫の死に切ない情をこめる小燕の心根が写し出され、その絆が南無妙法蓮華経と一天四海・皆帰妙法の入墨や題目を書いた経帷子のうちに脈打っていることを背後に示そうとしている。
《『鏡花全集』》

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