法華安心録
法華安心録
ほっけあんじんろく
一音院日暁(一六五八-一七一〇)が元禄一〇年(一六九七)に著作。
同一三年に刊行。
別名を『台当異目』といわれており、九七ヵ条と補闕七ヵ条とからなる。
内容はまず一念三千の法門について、天台智顗と日蓮聖人の相違する点を挙げている。
即ち『治病抄』の文を引いて、天台・伝教の時は迹門を中心とした理の一念三千であるが、今、日蓮の時は、本門の事の一念三千であって、天地遙かに殊なるものであると述べ、二種の三千の相貌について論じている。
問答形式を用いて台(天台)と当(日蓮)の相違する点を項目別に挙げ、天台より一歩を進めた日蓮の立場を明らかにしているのである。
この他に唱題を正行とし、法華経一部の読誦を助行とすること、正像末の三時代における種熟脱の三益に関する問題、更に教法を受ける機根の利鈍について論を進めている。
また末法下根の成仏論に及び、提婆品の悪人成仏を挙げ、法師品・譬喩品を引いて、法華得道の由来を説いている。
なお三秘についても論じ、特に本門の本尊については「首題本尊行者正意」を説いて、結帰するところは但だ題目にありとしている。
これは『本尊問答抄』を根拠とし、同抄が弘安元年(一二七八)の述作であるところから、本尊に関する最後・結究の御書であるとし、本尊は題目をもって正意とすべきであると論じている。本書は浄土宗との対論が意識されている点も見過ごせない。
《望月歓厚『日蓮宗学説史』》