御講聞書
御講聞書
おんこうききがき
一巻。
伝日向(一二五三-一三一四)記。
弘安三年(一二八〇)頃(奥付)。
『正蔵』八四巻、『昭和定本日蓮聖人遺文』所収。
『日向記』とも称する。
古写本は新曾妙顕寺所蔵。
板本(元禄一六年=一七〇四=本等)の奥書には「御本云明応九年庚申四月十三日」とある。
日蓮聖人の弟子日向が、聖人の法華経講義を筆録したものと伝えられているが、事実は日蓮・日向に仮託した後世の成立であると思われる。
法華経の中から要点項目を列挙して解説しており、総計九〇ヵ条(九二ヵ条)を数える。
即物的現実絶対肯定の観心主義の色彩が強く、天台本覚思想の観心主義思想の影響を受けて成立したものと考えられる。
日向の著述は『金綱集』一〇巻があるが、これは各宗の綱要を抄録したものにすぎず、日向自身の教学については明瞭ではない。
『金綱集』所引の要文や論述展開と本書との間に差異が見られることや、聖人遺文の引用要文との差異、聖人遺文に引用されることのない中古天台関係の書籍の引用の多さや、即物的相即の配当釈などの典型的な本覚思想が展開されていることなど、日蓮聖人の教学とは思想内容を異にする面が多いことから、後世の成立であることは明らかである。
『御義口伝』より本覚思想の傾向は素朴である。
『御義口伝』が興門における成立とすれば、本書は一致派における成立かとも考えられている。
《小松邦彰・花野充道『日蓮の思想とその展開』(春秋社『シリーズ日蓮』二)、『遺文辞典』歴史篇「御講聞書」の項、『日蓮辞典』「御講聞書」の項、『日蓮聖人大事典』「日蓮聖人の教導(門下教育)」の項》