五輪九字明秘密釈
五輪九字明秘密釈
ごりんくじみょうひみつしゃく
一巻。
覚鑁(一〇九五-一一四三)著。
著作年代は不明であるが晩年の作と推定されている。
『五輪九字秘釈』とも『頓悟往生秘観』ともいう。
本書は浄土教信仰が隆盛に向っている時期に、真言密教の立場からの阿弥陀仏観・浄土観を明らかにすることを目的として述作された。
五輪とは大日如来の三昧耶曼荼羅である地水火風空の五大のことで、その種子ア・バ・ラ・カ・キャ(a,va,ra,ha,kha)と九字とは阿弥陀如来の真言であるオン・ア・ミリ・タ・ティ・セイ・カ・ラ・ウン(oṃ,a,mṛ,ta,te,je,ha,ra,hūṃ)のことで、五輪と五字とは同一体であるといい、大日即弥陀の思想を強調している。
即ち大日如来と阿弥陀仏は一体平等であり、密厳浄土と極楽浄土は同処であり、往生即成仏であることを述べて、密教の曼荼羅的仏陀観から弥陀が大日如来の一門の仏であることを明らかにして、密教と弥陀信仰との融合を説いたものである。
なお日蓮聖人は諸宗教学を研鑽中の建長三年(一二五一)一一月二四日、京都で本書を書写している(定二八七五頁)。
中山法華経寺所蔵の日蓮聖人写本は、本書の写本の最古のものである。
『正蔵』七九巻所収。
《『遺文辞典』歴史篇「五輪九字明秘密義釈奥書」の項、『図説日蓮聖人と法華の至宝』二巻「真蹟遺文」》