抜苦与楽
抜苦与楽
ばっくよらく
苦を抜き楽を与えることで、抜苦は悲の徳、与楽は慈の徳。
仏・菩薩が衆生の苦悩を除き福楽を与えることをいう。
『大智度論』には「大慈は一切衆生に楽を与え、大悲は一切衆生の苦を抜く」(巻二六「釈初品大慈大悲義第四十二巻」二十七)とある。
『無量義経』説法品には「人天を安楽し苦の衆生を抜く、真の大慈悲なり、真実にして虚しからず」とあり、『法華経』譬喩品には「但智慧方便を以て三界の火宅より衆生を抜済せんとして、為に三乗の声聞・辟支仏・仏乗を説く」、薬王品には「この経は能く一切衆生を救ひたまふ者なり。この経は能く一切衆生をして諸の苦悩を離れしめたまふ」と説かれている。
末法においては地涌の大菩薩が、久遠釈尊の御意志の中で、一切衆生の苦を抜き福楽を与える。
日蓮聖人は『報恩抄』に「日蓮が慈悲曠大ならば南無妙法蓮華経は万年の外未来までもながるべし。
日本国の一切衆生の盲目を開ける功徳あり。
無間地獄の道をふさぎぬ」(定一二四八)と述べられている。
まさに聖人の不惜身命の法華経弘通は、一切衆生の堕地獄の道をふさぎ(抜苦)釈尊世界への道を開く(与楽)ものであった。
《『遺文辞典』教学篇「抜苦与楽」の項》