奥院
奥院
おくのいん
寺社の伽藍配置において本院より更に一歩奥地に独立して配置してある堂社をさす。
聖域の内の聖域ともいうべき存在である。
奥院の存在はふつう山岳寺院の伽藍配置において見られるもので高野山金剛峯寺の事例などがある。
このように本来、奥院の存在は山岳寺院との関りの深い真言・天台両宗の伽藍配置上一般に見られるものである。
日蓮宗でも寺域に山地を有する身延山久遠寺や能勢妙見真如寺の事例がみられるが、あまり一般的とはいえない。
だが近世中期以降には平地にある中山法華経寺、池上本門寺、藻原藻原寺などの本山格の寺院では自己の支配する末寺の内、特に本院と関りの深い由緒末を奥院として支配している。
このように山岳寺院の伽藍配置を模倣し、形式的な奥院をもつという動きは、中期以降盛んとなる出開帳による祖師信仰の流盛と無関係ではなく、聖域の更に聖域の奥地より出てくる祖師日蓮聖人の有難たさ、いわゆる神秘性を強調する考えから起ったと思われる。
とくに身延山久遠寺の出開帳の目玉が奥院の祖師像や、奥院の奥院ともいうべき七面山の天女像であったことからもこの点が窺われる。
《石田茂作『新版考古学講座』、坂誥秀一『仏教考古学調査法』、影山春樹『仏教考古とその周辺』、鶴岡静夫『古代寺院の成立と展開』》