口伝【教学】
口伝【教学】
くでん
口授・口訣・面授口決ともいう。
教義・作法の奥義が筆録されることなく口にて秘密の内に師から弟子へ伝えられること。
早く智顗の『摩訶止観』巻五の一に「皆口決を須(もちい)、智慧を用いて籌量(ちゆうりよう)せよ。
心を師として謬って是非を判ずることを得ざれ」とある。
最澄は『守護国界章』に「鏡像円融の義口決に非ずんば解せず」といい、また『法華秀句』には「仏説に依憑して口伝を信ずること莫れ」とも記す。
口伝の風習は密教、真言密教に多かったが、勝範(九九六-一〇七七)の頃天台密教にも取入れられて口伝形式が拡大、平安末院政期に口伝主義・口伝の法門が生じ、口伝書が多く成る。
日蓮聖人は最澄の『法華秀句』(前記)を引いて口伝の依用(えゆう)を誡めるが、『注法華経』に「蓮実房の口伝に云く」とあり「口伝相承の事は此弁公にくはしく申しふくめて候」(定四八四頁)との文を残す。
聖人滅後室町期に至って日蓮門下の多くは中古天台口伝法門の影響を受け、口伝に類した相承書、あるいは聖人仮託の遺文を多く造る。
『御義口伝』『御講聞書』は日蓮聖人仮託遺文の代表的口伝書である。
《『遺文辞典』歴史篇「口伝」の項、『日蓮辞典』「口伝」の項》