円極実義抄
円極実義抄
えんごくじつぎしょう
上下二巻。
『宗全』一巻所収。
直弟子天目(-一三〇八)著。
異名「日弁記」。
製作年不詳。
写本山梨県常在寺蔵(上巻欠)。
聖人滅後最も早い時期の本迹論の書として貴重な資料である。
写本下巻巻首に「日弁記」とあり、巻尾に「本門寺沙門天目集記」とあって、天目の生涯に不明な点が多いため日弁との同人説もあるが、本抄の内容は天目云として天目の主張が述べられている。
天目は宗祖滅後一九年に初めて本迹論を主張したとして有名であるが、本抄に「正安二年五月十日以来、天目身命を惜しまず、散々に彼の老僧らを破失す」と正安二年(一三〇〇)頃からの六老僧との本迹勝劣の論争を記している。
世に天目と日向が本迹論を争ってついに天目が負け帰伏したと伝えられているが、本抄をみれば、彼は一貫して本迹の異義を論じて他の直弟子達に譲らなかったことがわかる。
本抄は権迹を破するに五義ありとし、五義の分別に依って円の実義を極成せんとしたもので、結論は本迹二経の法体は天地の異なりあり、迹の十四品を捨てて本の経を取らざるべからずということにある。
一般には天目は迹門不読論で著名であるが、本抄では寿量品読誦を助行とし、唱題を正行、助行の中に迹門方便品等を読むべからずと記してある。
ただしこの書に対する文献的問題もあり、天目の本迹論も一様ではない。
《望月歓厚『日蓮宗学説史』》