金山抄
金山抄
こんざんしょう
日蓮宗を脱宗した舜統院真迢が著した『禁断日蓮義』に対し、観妙日存が反駁するために著したもので、一六巻から成り、寛文一三年(一六七三)に刊行されている。
真迢は日蓮宗を脱宗して後、日蓮教学に批判を加えた『破邪顕正記』を著した。
これに対して彼と関係のあったと思われる不受不施論者の学僧、寂静日賢、守玄日領、長遠日遵それぞれ応酬した。
そこで真迢は更に弟子真陽の名をもって、承応三年(一六五四)『禁断日蓮義』一三巻を著し、自らの学説を固執すると共に日賢・日領・日遵の三師を獅子身中の三虫と誹謗し、殊に当時の日蓮教団の内情を暴露することに努めている。
これに対して日存、三浦大明寺の日航、蓮華日題がそれぞれ反駁を加えた。
この時の日存の反駁書が本書である。
真迢の学説は宝地房証真の『三大部私記』に基づき、その信仰は恵心僧都源信の『往生要集』を指南とし、彼の学系は天台宗西教寺真盛を継承したものである。
真迢の日蓮教学に対する批判は、このような学説に立脚したものである。
これに対する『金山抄』の内容は、日存が真迢との対論によって、まず日蓮宗学の本義を明らかにし、天台の観心に対したものである。
本書はこれ以前に著された日遵の『諫迷論』などの反駁書に比べて、さらに宗学的に目醒めてきている。
即ち、真迢の観心正因論による「題目成仏論」に対する非難は、従来の天台ずりの教学より独立して日蓮宗の唱題成仏の真義を主張するに至っている。
《執行海秀『日蓮宗教学史』、望月歓厚『日蓮宗学説史』》