超人日蓮
超人日蓮
ちょうじんにちれん
劇作家であり評論家でもあった藤井真澄の書いた小説。
大正一二年(一九二三)五月、三五歳の時に第一巻を総文館より刊行。
日蓮聖人に関する伝記を土台にしながらも、ほとんどその原型をとどめないまでに思いきった創作をほどこし「本当のことを求めて」いく日蓮聖人の熱情を表現している。
表現の「超人」は奇跡や神秘性をもつことをさしておらず「真底の真底」まで分かりきらぬ限り中途半端ではやめようとせず、ひとすじに信仰の道を歩み通し清浄の身となった日蓮聖人の姿に「超人」性を見出している。
利欲と罪悪の充満する腐敗した世を仏教の力によって救うため心血を注ぎ「一度決心した以上は、如何なる障害があろうとも、やり遂げねば置かない人」と、日蓮聖人の生き方を綴っている。
その筆致の特徴的な例をあげれば、聖人がまっ黒い魔者の声と対決し「今に見ていろ! 日本第一の智者になるという大誓願をもっているのだぞ!」と誓願しついに清浄の身へと転換していった点を示した所に、心の迷いをふりはらい何ごとも形によらず人にとらわれないで、その底に含まれる根本の生命をつかんでいこうとする作者の意図が投映されている。