私立学校法
私立学校法
しりつがっこうほう
昭和二四年(一九四九)法律第二七〇号として同年一二月一五日公布された、私立学校に関する教育行政と私立学校の設置主体である学校法人および私学助成について規定する法律であり、私立学校に関する基本法。
戦前の私学法制が、私学の官公立学校に対する補助的機能に重点がおかれ、また国家の監督強化という点に制度趣旨が存したのに反し、戦後の私立学校法以下の私学法制は天皇制教学の思想と体制を原理的に否定し、公共性と自主性の法的確認の措置、官公私学の平等の保障、私学の民主的運営の保障を重視し、官僚的画一主義、形式主義的な監督の廃止に重点がおかれ、また国家の関与は私学助成(国の財政援助)の面でのみなされるものとなった。
私立学校法の立法の趣旨を要約すると次の如くである。
(一)、国民の教育権を保障する憲法および教育基本法等の基本理念にもとづき、私立学校を国公立学校と同一のレベルに置き、国公立学校と同等に公教育を担う教育機関として位置づけた(私立学校の公共性)。
(二)、私学の教育権の認容=国民の教育権の保障という憲法上の理念の派生原理として公教育機関としての私立学校に「教育の自由」を保障しなければならないが、「教育の自由」の保障のためには私立学校の建学の精神と独自な学風にもとづいた自由教育が尊重されねばならない。
さまざまな国民の教育要求に応ずるべく宗教教育、情操教育等が自由になされ得なければならない。
ここに国公立とは異った私立学校独自の存在理由があり、私立学校開設の権利と私立学校の教育権が認容される。
従って教育内容に対する国の干渉は極力排除されるのである(私学の自主性の原理)。
(三)、私立学校の運営、組織の民主化=国民の教育権を保障し、私立学校を公教育機関として位置づけ、かつ国民のさまざまな教育要求に応じうる機関たらしめるためには、私立学校(学校法人)自体の組織と運営の面での民主化が達成されなければならない。
民主的な経営、民主的な管理運営は私立学校が国民全体の公教育機関として存立する必須の条件である。
そのため私立学校の経営主体として「学校法人」の組織化をはかり、法人の機関たる理事の独走を防止するため理事以外の者の参加する「評議員会」の設置が義務づけられ(当校教育法第四一条以下)、理事長は重要事項については評議員会の意見を聞かなければならないこととなっている。
現在の私立大学の多くの現状は私立学校法の予想する以上に評議員会、教授会等、理事会以外の機関の発言権が強力になり、理事会を常にチェックし、法の予想したチェックアンドバランスはむしろ崩壊しつつあるともいえる。
(四)、私学助成制度の確立=戦前の私学に対する国庫の補助が、国家教育への奉仕の見返りとしての恩恵的なものであったのに反し、権利としての私学助成が認められるようになった。
次に私立学校における「宗教教育」の問題について若干言及する。
教育基本法第九条一項は「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない」と規定し、同条二項は国公立学校は特定の宗教のための宗教教育その他宗教活動をしてならない旨規定する。
一項の趣旨は、すべての教育(学校教育、社会教育、家庭教育)において宗教的情操と宗教の社会的役割を尊重すべきであることを宣言したものである。
二項は戦前における「国家神道」の考えを克服し、国が行う宗教教育が信教の自由にとって如何に危険であるかの反省にたって規定されたものである。
従って国公立学校以外の私立学校は当然除かれるから、私立学校は特定の宗教のための宗教教育を実施する自由を有し、宗教活動を行う自由を有する。
しかし憲法第二〇条二項に「何人も宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」と規定されることから、私立学校といえども、その児童、生徒、学生に対して特定の宗教教育を行う授業への参加を強制してはならないこととなる。
即ち学校側の「宗教教育実施の自由」の前提には教育を受ける側の選択の自由が存するのである。