文段経
文段経
もんだんぎょう
一〇巻、法華文段経、文段法華経、遠師文段経ともいう。
江戸時代に、法華版経に朱と墨で書き入れした「文段経」と称する法華三部経が刊行されたが、この原本は身延二二世心性日遠(一五七二-一六四二)が三二歳頃から一〇年近くを費して春日本(かすがぼん)法華経(春日神社で開版印刷された法華経)に「科文を配し、諸経論の要文を記し、倭点を加えた」(日遠記)講本である。
この本は慶長一七年(一六一二)に刊行されているが、その日遠の刊記に「夫れ経旨を直談せんが為に、諸文に於て有便の章句を取り、以て之に書き加ふ。
文段の下、また諸の点本を集めて、其の善者に従ふ」とあり、文段法華経を作った日遠の意図は、ここに明瞭で、一つは本文に関わりのある注釈を付記し、二つは諸本を参考にして音点和点をつけたということである。
「文段」の名は本経に科文を付して段を分ったところから呼称されたのである。
本文の注記は『法華文句』を抄録することが最も多く、そのほか天台諸家の論書、また諸経論が引かれている。
この文段経の意義は、法華の教学要綱を天台教学を基本として経の本文に当てはめて集録し、読み方、訓にも意を用いて法華経を読誦、修学する者の便を計った良書であるということである。
慶長一七年の日遠筆写本は現在、身延文庫・立正大学・小湊誕生寺の三ヵ所に所蔵されている。
《本満寺発行『日遠上人文段経妙法蓮華経並開結』解説》